happy morning



カーテンの向こう側で煌く朝日が、部屋にレース模様の影を作る。
開け放したままの窓から、ふわりと入り込む風がカーテンを揺らして、その影を様々に変えていた。
万華鏡みたい。
夢と現(ウツツ)の間を彷徨いつつ、形を変えていく影をボンヤリと見つめながら、私は甘い溜息を零した。


背中には愛しい人の気配、そして、温かな体温。
腰に回る逞しい腕、引き寄せる強い力。
今朝はアイオリアと二人で迎える、初めての朝だった。


「……アリナー?」
「起きてたの、アイオリア?」
「あぁ、アリナーは?」
「ちょっと前に目が覚めて、ボンヤリしてた。」


ボンヤリしていたと言うか、甘い幸せを噛み締めていた。
思いも掛けず、ずっと好きだった人と想いが通じ合い、こうして共に朝を迎える事になって。
私はあまりの幸せに、まだ夢を見ているのではないかという気持ちでいっぱいになる。
だけど、背後から感じるアイオリアの息遣いと体温は、間違いようもなく現実に感じるもの。
甘い溜息を一つ零すと、私は腰に回る彼の大きな手に、自分の小さな手を重ねた。


昨夜は人馬宮に集い、皆で飲み会だった。
目の前で次々と空になっていく酒瓶を眺めながら、お酒のあまり強くない私は、酔い潰れていく皆を呆れ返って見ていたいたところ、アイオリアがあまり飲んでいない事に気が付いた。


「どうしたの? アイオリアって、別にお酒が弱いとかじゃないよね?」
「あぁ、酒は強い方だと思うが……。明日は朝から後輩指南に当たっているんだ。流石に、酒臭い状態で修練の場に行くのはマズいだろう?」
「それもそうよね。」


酔っ払いを相手にするのも大変だったし、私とアイオリアは他の人達は放っておいたまま、二人で延々と話を続けていた。
密かに想い続けていた人と、こんなに打ち解けて話が出来るチャンスは滅多にないだろう。
話をしてる内に、考え方とか接し方とか、そういう相性も彼とは悪くない、むしろ凄く良いと分かり、私の心は期待と希望に踊った。


深夜十二時を回り、アイオロスによって人馬宮から追い出されると、下へと向かう私達はノロノロと階段を下った。
途中、まだ飲み足りない様子のカノンとデスマスクは、ミロと天蠍宮で飲み会の続きをすると言い出し。
そのため、下へと向かうのは、アイオリアと私だけになって――。


「今夜は泊まっていかないか?」


獅子宮に辿り着いておもむろに足を止めたアイオリアが、そう切り出した時。
私はこれほどの機会を与えてくれた女神様に、心の中で最大限の感謝の言葉を贈った。





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