緑のベッドで愛を



背後に延々と続く鬱蒼と茂った森と、大きな岩陰によって、死角となったこの場所。
陽が当たらないせいか、冷たくヒヤリとした草の上に横たわったキミは、ギュッと目をキツく瞑って顔を背けていた。


「……アナベル、アナベル?」
「……んっ。」


名前を呼び掛けても、キミは顔を背けたまま、目も開けようとはしてくれない。
それが尚更、俺の苛立つ心の炎に油を注ぐ。
もっと強く、もっと深く、キミに分からせなきゃいけないと、そう心の中で繰り返されるこだま。
こんな風に俺に押し倒されて、キミが怯えてると分かってはいても。
止まるどころか増すばかりの苛立ちに飲まれ、俺は冷淡な瞳で、苦しそうに背けるキミの横顔を見下ろした。


「目を開けて、ちゃんと俺の事を見て。」


耳元に囁いた言葉は、いつもと変わらないよう優しく告げて。
だが、それは絶対に逆らえないだろう威厳を籠めた低い声。
途端にビクッと身体を揺らしたのは、それに気付いてなのか、ただの本能なのか?
どちらにしろ、何かを感じ取ったキミは恐る恐る目を開き、ゆっくりと顔を上に向けた。


「良い子だ、アナベル……。」


怯えた瞳、一体、何をされるのだろうと、不安を隠せない色を浮かべて。
いくら怒っているとはいえ、俺が恋人のキミに酷い仕打ちでもすると思っているのだろうか?
少しでも、その不安を取り除いてやろうと思い、ふっくらとした頬に触れようとして、ふと気付く。
自分の両手は今、キミの両手首を拘束し、頭の上に押さえ付けるために塞がっていたという事。
仕方なく、その手首を一つに纏めて片手を空けると、その空いた右手でキミの頬にそっと触れた。


「っ?!」
「怖いのか? 俺が、そんなに怖い?」
「だって……。」


だって?
だって、何だと言うんだ?
悪いのはキミじゃないか、アナベル。


あろう事か、俺とアイオリアを間違えた。
良く似てる兄弟と言っても、サガとカノン程は似ていない。
赤の他人なら兎も角、恋人であるキミが、恋人である俺を、間違うなんてあって欲しくなかった。


「アイオロス……。どうする気、なの?」
「アナベルはどうされたい? どうして欲しい?」
「私、ちゃんと謝ったわ。だから……。」


押さえ付けた手を解いて欲しい。
そう言い掛けた唇を、ワザとキスで塞いだ。
ズルいと思われても仕方ないが、聞く耳なんて初めから持たない。
そう、キミをこの草むらに押し倒した時点で、これからどうするかは決まっていたんだ。





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