「で、アナベル。双子座は?」
「……は?」
「ほら、アナベル。サガが双子座の運勢も知りたいんだって。何、ぼんやりしてるんだ?」
「あぁ、はいはい。双子座ね。えっと……、『困っている人に手を差し伸べれば、感謝されたり、ご褒美を貰えるかも。』ですって。」
「困っている人……。ご褒美……。」


何故か考え込むサガ。
その目の前で、急に困った振りを始めるアイオロス。


「寒気がするなぁ……。早く帰りたいけど、この書類……。困ったなぁ……。」
「手伝おう、アイオロス。」


吃驚するくらい胡散臭いアイオロスの三文芝居。
それを呆れて見ていた私の視界の中、ヒョイッと手を伸ばしたサガが、アイオロスのデスクに積まれていた書類を半分、引き受けたのを見て、驚きを通り越して驚愕した。


えぇっ!
サガ、あんな芝居に騙されたの?!


「困っている人を助ければ、褒美が貰えるのであろう?」
「何だ、サガ? お前も意外と現金なヤツだったんだな。」
「半分も手伝ってやるのだぞ。お前は黙って褒美をよこせば良いのだ、アイオロス。」
「で、何が望みなんだ?」
「そうだな……。」


考える素振りで顎に手を当てたサガ。
だが、その目は私の方を、思いっきり流し見ていた。
え、何、あの視線?
凄く熱っぽいんですけど、色気が滲んでるんですけど、思わせ振りなんですけど?
何だか、とてつもなく嫌な予感がするんですけど?


「今度、アナベルと二人で食事に行かせ――。」
「却下だ。」
「まだ全部、言い終えてないぞ、アイオロス!」
「言わなくても分かる! 絶対に駄目だ! 却下! 却下!」
「この独占欲の塊が!」
「何とでも言え! アナベルは俺だけの恋人だ! デートなど許さん!」


子供みたいに言い合いを続ける二人を遠目に、溜息をひとつ。
暫くは終わりそうにないと分かっていたので、私は彼等から目を離し、再び『デイリー聖域』に視線を戻す。
今日の私の星座は、と……。


『家庭運が好調、家族とゆっくり過ごせば絆が強くなるでしょう。』


ゆっくり、ねぇ……。
執務を早く終わらせて意気揚々と帰ってきたアイオロスが、果たして『ゆっくり』なんてさせてくれるのかしら?


「これで決まりだ、サガ。分かったな。」
「仕方ない。今回は夜勤の交代でまけてやろう。」
「良し! ならば、急いでこの書類を片付けて、今日は早く帰るぞ!」


さっきまで「寒気が。」とか言ってたのは、どうなったのやら。
随分と元気いっぱい、やる気満々なアイオロスを見て、二つ目の溜息。
まだ、お昼休憩の時間も終わらないのに、腕捲くりなんかしちゃって書類を書き始めている。


この分じゃ、『ゆっくり過ごす』なんて絶対に無理ね。
間違いなく、夜が更けるより前に、昨夜の続きに引き込まれるのだろうから。



風邪をひいたって、貴方は貴方



「アイオロス、私、先に人馬宮へ帰るね。」
「あぁ、アナベル。早く帰るから、楽しみに待っててくれ……、は、はっくしょん!!」


所詮は星占い、されど星占い。
ゆっくり過ごして絆が強くなると言うのなら、私はアイオロスと二人、ゆっくりとした時間を過ごしたいんだけどな。



‐end‐





職場で生命保険のお姉さんが持ってきたチラシに載ってた『今日の星座占い』を見て、突然、降って湧いたネタです。
占いの内容は、そこから丸っとそのまま頂きました(苦笑)
実は、ただ単にロスとサガの小競り合いみたいなのが書きたかったとか^^

※『デイリー聖域』は、聖域内で売ってる一番人気のゴシップ新聞です(笑)

2009.11.03



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