溜息ついでに、横を向いたままアナベルの肩に腕を回した。
途端にビクッと反応して、見開いた目で俺の方を振り返る彼女。
その顔には、「また言うの?」と、はっきり表情に表れている。
俺は柔らかな黒髪を掻き上げ、至近距離からアナベルの顔を覗き込んだ。


「で、どうすれば良い?」
「だから言ってるでしょ。言い過ぎなのよ、アイオロスは。顔を合わせる度に『愛してるよ。』じゃ、うんざりするのも当たり前よ。」
「つまり、言う回数を減らせ、と?」
「その通り。減らした分だけ、ギュッと濃縮して言ってくれれば、想いも深く伝わるでしょう?」


そんなものなのか?
イマイチ良く分からんが、アナベルがそうして欲しいと言うのなら、そうするのが良いのだろう。


しかし……。


「いつ、伝えれば良いんだ?」
「は……?」
「減らした分、いつ『愛してる。』って、言えば良いんだ?」
「それは……。」


アナベルは、何故か顔を赤く染めて口篭った。
見開かれた彼女の瞳は、「そんな事も分からないの?」と、非難がましく俺を見ている。
そんな目で見られてもな、分からんものは分からん。
それは仕方ない、考えても分からないのだから。


「そりゃあ、まぁ……。夜、とか……。」
「夜? 夜だと良いのか?」


目を逸らして俯いたアナベルの顔が、益々、赤くなっていく。
何なんだ、一体?
減らせと言ったのはアナベルなのだから、伝え時というのも、ちゃんと教えてくれたって良いだろうに。
俺はアナベルが喜ぶように、アナベルが望むように出来ればと、そう思っているのだから。


「夜って言ったら分かるでしょう? もう、アイオロスのバカっ!」
「は? バカって?! 俺はただ、アナベルのお望みのままにと思って――、あ!」


そうか、そういう事か。
やっと分かった。
アナベルが口篭っていた理由も、その顔が赤く染まった理由も。


「そうか……。愛し合ってる時に言って欲しいって事なのか。」
「……バカ。」


真っ赤な顔したアナベルは俯いたまま小さく呟くと、慌てて席を立って、キッチンへと消えていった。
その華奢な後ろ姿を見ながら、俺はもう一つ溜息。
ただアナベルに想いを伝えられれば、俺はそれで良いんだがな。
どうしてこうも、回りくどい事をしたがるのだろう?



女心というやつは、全く……



ああして欲しい、こうして欲しい。
女の子というのは、何て我が侭な生き物だろう。
でも、そんなトコロも可愛くて、ついつい、また伝えたくなる。
よし、今夜はたっぷりとアナベルの耳元に囁いてやろう。
「愛してるよ。」と、何度も何度も惜しみなく。



‐end‐





久々、ロス兄さんです。
(エ)ロス兄さんを書くつもりでしたが、思い止まりましたw
ロス兄さんは惜しみなく愛情表現をしてくれそうですが、ちょっと女心に鈍かったら良いかなぁなどと、一人勝手妄想で悶え中です(笑)

2008.07.16



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