これも一つの愛情表現



「愛してるよ。」


俺がそう囁く度に、アナベルは嫌な顔をする。
以前は嬉しそうに顔を綻ばせて、俺に微笑み掛けてくれてたんだが。
最近は、もう止めてと言わんばかりに歪めた表情を、隠しもせずにあからさまに俺へと向けてくる。


「嫌なのか? 俺に愛してるって言われるのが。」


堪え切れなくなって、思わず聞いてしまった。
駆け引きも何もありはしない。
これぞ真っ向勝負だと、強い視線をアナベルに向けて。


「言われるのが嫌なんじゃなくて、アイオロスが言い過ぎるから、うんざりしてるのよ。」
「……うんざり?」
「そ、うんざり。」


うんざりって、随分と酷い言い様だな。
俺がこんなにも想いを籠めて、アナベルに想いを伝えているというのに。


「そりゃあ、愛してるって言われるのは嬉しいけど、物には限度があるでしょう?」
「俺は、そう思った時に、言葉にして伝えているだけだが?」


愛してると伝えたい時に伝えて、一体、何が悪いんだ?
それの何がいけない?


「そんなにしょっちゅう言われると、言葉に深みが感じられなくなってくるのよ。」
「そんな事はない。俺はいつも全身全霊でアナベルを想ってる。」
「そう言われてもねぇ……。こう、有難みがないと言うか、薄っぺらく聞こえちゃうって言うか……。」


そう言って、アナベルは小さく溜息を吐いた。
いや、この場合、溜息を吐いて良いのは俺の方じゃないのか?
折角の俺の愛情表現が、こんな風に受け止められていると知って、ちょっとしたショックどころじゃ済みそうもない。


「もっとこう……、ここぞっ! て時に、言って欲しいのよね。シュラさんみたいに。そしたら、もうクラクラしちゃうくらい素敵なのに。」
「何で、ココでシュラが出てくるんだ?」
「だって、シュラさんの彼女が言ってたんだもの。」


『普段は口下手で、全然そういう事を言わないのに、大事な時にはビシッと伝えてくれるのよ。それはもう、本当に素敵で目眩がする程なの。』


まぁ確かに、あの寡黙なシュラが、あの流し目で、ここぞという時に「愛してる。」などと言った日には、クラッとくるのも頷ける。
だが、俺とシュラではキャラが違うだろ。
それはシュラだから素敵なのであって、俺が同じ事をしても、同じようにアナベルを痺れさす事が出来るとは思えないが。


「例えばの話よ。誰もシュラさんと同じようにしてなんて言ってない。」
「じゃあ、どうすれば良いんだ?」


唇を尖らせて横を向いたアナベルを見て、今度こそ俺が溜息を吐いた。





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