予想以上の感覚に、俺は無我夢中で溺れた。
自分をしっかりと受け止めてくれるアナベルの、心地良い身体の感触。
こんなにも一つに繋がり合う事が素晴らしいと感じたのは、初めてだ。
動けば動く程に、アナベルの身体は俺に深く濃い快感を与えてくれる。
そして、それはアナベルも同じだろう事を、真下に見下ろす彼女の感じ入った表情から読み取れた。


これ程に相性の良い相手がいるなんて、な。
これから先は、アナベル以外の相手では満足出来ないだろうとさえ思えるくらいに強く。
これは最高に芳醇で濃厚で、この世に二つとない快感だった。


「アナベル……。凄い、最高だ。」
「はぁ、んっ……。アイ……、ロス、さまぁ……。あっ、ああっ……。」
「我慢しなくて良いよ、もっと声出して。ココは俺の宮だ、誰にも聞こえない。」
「あっ! ろ、ロス……、さまっ。ああっ、あっあっ!」


己の持つ全てのものをアナベルにぶつけて、今まさに、二人共に同じ場所へ辿り着こうとしている。
枷のなくなった彼女の声は、熱い吐息の輪と共に色っぽく開いた唇から零れ落ち、暗闇の支配する人馬宮の中に響き渡っていった。


――ギシッ、ギシギシッ……!


「ろ、あっ……、ロス、さまぁ……。あっ、あ!」
「何? どうした、アナベル?」
「おね、がい、あっ……。ギュッて、あっあっ……。し、て……。あ、ああっ!」


苦しげで悩ましげな吐息と共に告げられた言葉に、俺は意識を失い掛けた。
何て嬉しい言葉を言ってくれるのだろう、アナベルは。
俺を危うく頂点まで昇らせ掛けた魅惑の言葉を、無意識に洩らし、より深く俺を誘うなんて。


俺は一度、深い息を吐くと、体勢を整えて、アナベルを強く抱き締めた。
それと同時に、最終地点目掛けてラストスパートを掛ける。
アナベルの上げる高い声と同じくらい激しく軋むベッドと、交じり合う二つの身体から響く音。
ただ彼女と共に昇り詰めたくて、同じ喜びを分かち合いたくて。
必死で突き進んだ、眩い光の見える方角へと。


――ギッギッ、ギシッ、ギシッ……!


「くっ……!」
「んっ、あっ! あっ、あああぁぁぁっ!」


そして、その光に全てが包まれ、これ以上ない喜びへと到達した瞬間。
アナベルの快感に震える身体を強く抱き締め、彼女に抱き締められて迎えた甘美なる時。
俺の熱い身体は、思いの丈の全てを彼女の内側へと吐き出した。
それでもなお、この身体に絡まるアナベルの黒髪の感触が消えなくて、シーツに乱れて広がる髪に思わず顔を埋める。
最高の喜びに達した余韻から覚めやらぬ耳には、アナベルのものか、俺のものか、どちらのものかも分からない歓喜の嬌声が、こだまして離れなかった。



黒髪に乱れて今宵、熱い身体で想いを紡ぐ



その後――。


腕に抱いたアナベルは、恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めて隠れてしまい、その愛しい表情を俺に見せてくれようとはしなかった。
だが、ポツリと一言、微かな声が響いて。


「私もずっと、アイオロス様をお慕いしておりました……。」


その言葉を聞いた刹那、再び跳ね上がる、正直な俺の心と身体。
そして、心の赴くままに身体を反転させて、もう一度、彼女に覆い被さった。
もう我慢など出来る筈もない、ひたすらアナベルを求めずにはいられなくて。
深い夜の静寂(シジマ)に艶やかな声を響かせ、朝が来るまで何度も何度も、アナベルとアナベルの愛に溺れた。



‐end‐





どうにも(エ)ロス兄さんを書きたい衝動が抑えられなくなり、書いてしまいました(滝汗)
微裏と言って良いのか激しく不安な一品ですが、それでも微裏と言い張ります(ェ;)
今回のヒロインさんは、シュラ夢『A Silent Night』の会話中に出てきた、アイオロスに手を出されてしまった磨羯宮の女官さんです。
こんな経緯があった訳なんですね。
それにしてもロス兄さん、人馬というより狼です。
寝込みを襲うなんて、流石、(エ)ロス兄さんだw

2009.03.01



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