「知ってるぞ。この前、俺に隠れて何かを買っていた事くらいな。」
「え? あ、それは……。」


それは間違いなくアイオロスへのプレゼントだった。
彼に気付かれぬよう、こっそり買っていた事を、どういう訳か知られていたのにも驚いたが、ベッドに押し倒されたこの状況で、まさか本物のプレゼントの話を持ち出されるとは。
アンディは驚くより前に、唖然としてしまった。


プレゼントを強請る割には、ベッドに縫い付けたアンディを離そうともしない。
ニコニコと笑顔を浮かべたまま、額や頬、鼻の頭と、好き勝手にキスを落としていく。
それは本当に楽しげに、可愛がられている犬が、ご主人様に甘えて顔を舐める仕草にも似ている。


「ほら、プレゼント取りに行くから、退けて? ね、アイオロス?」
「ん〜、どうしようかな……。」


ちょっとだけ首を傾げて、でも笑顔は崩さない。
典型的な酔っ払い状態のアイオロスは、アンディの肩を押さえる力も緩めようとはしてくれず、ズッシリと圧し掛かったままに、ご満悦の表情で彼女を見下ろしている。


「ほら、プレゼント欲しいのでしょう? 離してくれなきゃ、取りに行けない。」
「アンディからのプレゼントかぁ……、何だろうなぁ……。」


突然、気が変わったのか何なのか。
兎に角、酔っ払いの思考も行動も、先が読めないもの。
アイオロスはふにゃりと笑って、アンディの上から退けた身体をベッドにドサリと沈めた。
フニャフニャと言葉にならない声を発し、引き寄せた枕を抱き締める姿は、やはり幼い子供のよう。


この人は、ちゃんと意識があるのかしら?
明日、目が覚めたら何も覚えてないって事はないわよね?
呆れの溜息を吐いて、アンディはベッドを滑り降りる。


「あった。ほら、これ、アイオ……、ロス? え、寝ちゃったの?」
「…………。」
「全く、もう……。」


困った人ね。
呟いた言葉に、答える人はいない。
見下ろすアンディの視界の中、愛しい彼は夢の中。
幸せそうに口元を緩めて、ギュッと枕を抱き締めて眠るアイオロスの寝顔に、抑え切れない笑いが零れる。


「ん〜……、アンディ……。」
「なぁに、アイオロス?」


一体、どんな夢を見ているのか。
夢の中でも自分を求めてくれていると知って、アンディの顔には今日一番の幸せそうな笑みが浮かんだ。
手にしたプレゼントを彼の枕元に置き、再びアイオロスの髪を優しく撫でる手は、聖母のように優しい。



愛する人の寝顔に感じる幸せの瞬間



「メリークリスマス、アイオロス……。」


幸せな寝顔に優しいキスを。
アンディの柔らかな唇が触れた頬は、いつも以上に温かな熱を持っていた。
明日の朝はきっと、午後近くまでベッドに釘付けにされるのだろう。



‐end‐





太ましいロス兄さんは翌朝まで持ち越しって事で(爆)
酔っぱらっていたとはいえ確実に不完全燃焼な兄さんは、ベッドのスプリングが駄目になるまで夢主さんを筋トレ(という名のアレやコレや)に付き合わせるに違いないですw
一頁ものを書いていた筈が、予想外に長くなりましたが、これもクリスマスの贈り物ですかね^^

2012.12.24



- 3/3 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -