困らせてでも



俺の眼前には、目を丸くした親友が二人。
いつもは余裕たっぷりな微笑を浮かべているアフロディーテの野郎と、無表情が貼り付いた様な能面顔のシュラ。
その二人が、人間ってのはこンなに目を丸く出来んのかってくらい真ん丸な目をして、俺の事を穴の開く程、見つめている。


そして、もう一人。
目を漫画みてぇに丸くした上、口までポカンと開けて俺を見上げるのは、腕の中で固まったままのアリア。


あ、そうか。
ヤツラが呆然と見ているのは『俺』ではなく、『俺達』だな。
俺と、俺に肩を抱かれたアリアの二人。


「どういう事だい、それは?」
「どうもこうもねぇ。言った通り、聞こえた通りだ。」
「つまりは、だ。アリアは『お前の女』だと言いたいのか?」
「それ以外の言葉に聞こえたンなら、一回、耳鼻科に看て貰うのを勧めてやるよ。」


俺はアリアの肩に回していた手で、更に強く彼女を引き寄せた。
途端にハッとして、俺のシャツの胸倉を掴んでくるアリア。
肩に回された手を振り払うでもなく、顔を赤らめるでもなく、俺様に掴み掛かってくるとはな。
やっぱコイツ、最高だわ。


「な、何を言い出すんですか、急に! デスマスク様ったら、頭がおかしくなったんじゃないですか?!」
「俺の頭がイカれてんのは、今に始まった事じゃねぇだろ。」


事も無げに、そう言ってのければ、またアリアはポカンと口を開けて俺を見上げた。
ただし、シャツを掴み上げた手は離さないままな。
それが可笑しくて、俺はクックックとワザと声に出して笑う。


「オマエ、そんなに俺を離したくねぇワケ?」
「っ?! ち、違いますっ!」


俺の言葉の意味を理解した瞬間、慌てて手を離すアリア。
顔を真っ赤に染めて、いつもの強気のアリアにしてみりゃあ、らしくねぇ恥ずかしがり様。
そんな様子を見て、俺は再びクックックと挑発的に笑ってみせた。


「おい、デスマスク。本気か?」
「何がだ?」
「さっき言った言葉さ。『今日からアリアは俺の女な。手ぇ出すなよ、オマエ等。』ってのだよ。本当に本気で言ったのか?」
「本気も本気、大真面目。コイツに手ぇ出したら、例えオマエ等でも容赦しねぇぜ。」


口調も態度も冗談めかしているが、どうやら俺が本気だって事、腐れ縁のコイツ等には伝わったらしい。
触らぬ神に何とやらで、こういう時の俺には何を言っても無駄って事、良く分かってるからだろう。
ついさっきまで唖然とした表情を浮かべていたヤツ等は、今は呆れた顔をして、溜息でも吐きた気に肩を竦めてみせた。


「ちょっと待って下さい! 私の気持ちは――。」
「知らねぇよ、そんなモン。」
「なっ?!」


あぁ、知らねぇさ、アリアの気持ちなんてな。
俺がコイツを気に入った、コイツを欲しいと思った。
だから、俺の女にする。
そう決めた。


大体、俺が落とすって決めたンだ。
否応無く、直ぐにも俺のモンになるに決まってンだよ。
どんなに抵抗したところで無駄無駄。



お前の気持ちなんざ知るかよ



「デスマスク様の横暴っ!」
「けっ、言ってろ言ってろ。今にそんな口もきけねぇようにしてやるぜ。」
「どうする、シュラ?」
「放っておけ。」



‐end‐





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