手を伸ばして、もう一度、その銀の髪を撫でる。
感触を確かめるように、何度も髪に指を通しながら、私はふと思った事を聞いてみた。


「ねぇ、もし天変地異か何かが起きて、デスと私、この世に二人だけしか残らなかったら、どうする?」
「は? ンだよ、それ?」
「例えばの話。ね、どうする?」


デスは「あ〜。」とか力の入らない声を出しながら、高い天井を眺めた。
それが、いつも何かを考える時の彼の癖。
そうして暫く天井と睨めっこを続けた後、おもむろに私を見てニヤリと笑った。


「やっぱ、押し倒すしかねぇだろ。」
「は……?」


私は唖然と彼を見つめた。
視界の中には、ニヤニヤと彼独特のアクの強い笑みを浮かべるデスがいる。


「あの……、私、真面目に聞いてるんですが?」
「俺だって真面目に答えてるぜ?」
「真面目? 押し倒すとか言って、ニヤニヤしてるのに?」
「真面目も真面目。大真面目。」


そう言ってデスは、「よっこらせ。」とソファーの上に起き上がり、同時に私の腰に腕を回して引き寄せる。
いつもの慣れた仕草。
当たり前にグッと掛かる、その手の強さが嬉しい。
こうして彼が私を必要な存在なのだと、行動で示してくれるのが嬉しい。
だが、そんな事で喜んでいる場合ではないのだ。


「どこがどう、大真面目だって言うのよ?」
「決まってンだろ。この世に二人きりになったら、俺達が子孫を残さなきゃ人類が絶滅しちまう。つー事で、即行で押し倒して、後は子供出来るまで何度も何回も頑張るしかねぇだろが。違うか、アリア?」


言ってる事、滅茶苦茶。
でも、何だか妙に納得してしまって。
言葉の中に含まれた艶っぽい意味に赤らんだ顔を、デスから見えないように俯く。


と――。


腰に回されていた腕に、更に力が入った。
そう感じた時には、掬い上げられるように抱き締められ、そのままボフッと二人一緒にソファーに沈んでいた。





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