不思議。
先程まで手の中にあった小さな青い地球よりも、この視線の先にある血の色をした紅い瞳の方が、何倍も何千倍も美しく見えるのは、何故?
答えは聞かなくても分かっているのに、自分自身の胸に聞いてしまう。
そして、心の中で繰り返すの。
それは『恋』よ、と……。


「あっ……、んんっ。」


屈服してしまいそうになる私の心を見透かしてか、こちらから手を伸ばす前に、スッと伸びてきたデスマスクの手に強い力で引き寄せられていた。
強引に重ねられた唇は、押し潰されてしまいそうで。
でも、決して乱暴じゃなくて、激しいのに優しいの。
相反する二つを同時に教えてくれるデスマスクの口付けは、我を忘れて私を夢中にさせる。


深く濃厚過ぎるキスは止めないまま、引き寄せられた時に頬に乱れ掛かった髪を掻き上げてくれる指の感触。
ゴツゴツしているように見えて、とても繊細で長い指のザラリとした感触。
邪魔臭そうに払うのではなく、ゆっくりと髪を掬う、その行為自身が、一種独特の愛撫のようで。
私は身体の内側から熱い息が零れてくるのを止められなくなる。
そして、その息は彼の唇に飲み込まれ、彼の中でより熱い情熱に変わるのだ、きっと。


ボスンと背後から聞こえたのは、ベッドが空気を吐き出した音。
デスマスクと私の二人分の体重を受け止めて、心地良さそうに吐いたベッドの溜息。
いつの間に、こんな風に押し倒されてしまったのかしらと考えたのも束の間。
当たり前に絡まってくる彼の身体に全身を絡め取られて、後はただ堕落しきった天国へと飛翔を始める。


「は、あっ……。ん、んんっ!」
「良いぜ、アリア。我慢しねぇで、もっと声出せよ。この俺をメチャクチャ燃え上がらせる鳴き声、俺の耳にだけ聞かせろ。」
「や、あっあっ! ん……! デス……、は、ぁんっ!」
「んー?」
「す……、き? 私の事、好き? あ、あああっ!」
「当たり前だろ。聞くな、こンな時に。」


こんな時だからこそ聞きたい。
デスマスクの腕の中で、気も狂わんばかりの快楽の向こう側へと辿り着けそうな今だからこそ。
でも、眩い光に眩む視界と、激しくなる一方の交わりに、もう何も考えられない。
気が狂いそう……。


密着する肌の熱さが彼の答え。
好きだから、こんな風に私を導いてくれる。
共に喜びの淵へと沈み込もうと、持てるもの全てを私にぶつけてくる彼が愛しくて。
私は枷の外れた理性の先で、一際高い声を上げ、愛しい彼を私と同じ場所へと引き摺り込んだ。


「あ、あああっ! あ、あーー!」
「はぁ……、っと。アリア、やっぱオマエ最高。イイ身体しやがって。」
「デス、マス、クの……、バカぁ……。」


そして、意識は遠くに薄れ――。


目が覚めたのは、薄っすらと香る煙草の香りのため。
疲れ果てた私は、ホンの僅かの時間、気を失っていたようだった。
重たい身体はそのままに顔を上げると、デスマスクはベッドに寝そべったままで、気だるげに一服中。
ベッドの上では吸わないでって、いつも言っているのに……。


煙草の匂いはキライ。
そう思って、自分の腕を顔の前に回して鼻を塞ぐ。
ふと、仄かに香るエスプレッソの香りに、トクンと鳴った胸の奥。
濃密な愛情表現は、デスマスクの香りを私の身体にもシッカリと染み込ませていた。



この身体を包む、心惑わす彼の移り香



スパイスのようにエスプレッソが香る独特な香水。
それは、あの小さな『地球』の上に住む、どんな男性にも似合わないもの。
きっとデスマスクだけ、彼だけが当たり前のように使いこなせる香り。
自身がスパイスのように刺激的なデスマスクだからこそ、素敵なの。



‐end‐





去年の蟹誕記念夢は暗く切ない悲恋夢だったので、今年こそはと甘夢を書きました。
甘夢じゃなくて、ERO夢だろ! って突っ込こみが聞こえる(滝汗)
でも、久し振りにEROっぽい蟹さまが書けて大満足なのでした。

ちなみに情事後一服蟹さまは、某A様宅の尻蟹さまです(パクりかっ?)
ついでのちなみに、何度もしつこく言いますが、当サイトの蟹さま愛用香水は『ポロ・ダブルブラック』です。
エスプレッソが香る蟹さまっぽい香水なのです^^

何はともあれ、デスさん誕生日おめでとうなのです!!

2009.06.24



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