ザザザザザ……。
ドタドタドタ……。


近付いてくる男達の足音。
徐々にはっきりとしてくる私を探す彼等の声。


「あっちだ!」
「クソ、あのアマ! コソコソ逃げ隠れしやがって!」


やだ、どうしよう?!
このまま走っていても捕まる!
逃げ切れない、どうしよう?!
どうしよう、どうしよう?!
助けて、デスマスク!
デスマスク!!


「いたぞ! こっちだ!」
「待て、逃げんな、テメェ!」


こんなパーティー、来なければ良かった。
例の取引を見てしまった時と同じ主催者だったから、嫌な予感がしていたのに。
父にどうしても大事な取引先の御子息と懇意にして欲しいと頼まれて、断れなくて来てしまったのが、運の尽きだった。


嫌な予感は的中するもので、やはり私を始末しようとする連中が、アチコチに身を潜めていたらしい。
宴が盛り上がり、人の目が他に集中したタイミングを見計らって、彼等は一気に私を狙ってきた。
そしてその時、デスマスクは私の傍には居なかった。


「おぉ、馬子にも衣装じゃねぇか、アリア。少しは良い女に見えるぜ。」


私の黒いカクテルドレス姿を上から下まで舐めるように見た後、デスマスクが放ったこの一言。
そんな言葉を言うより、まず、その下品な視線で人を見るのは止めて欲しい。
そう返すと、彼は反省どころかニヤリと笑って私の肩に手を回した。


「素直になれや、アリア。ホントは嬉しいンだろ? 俺に褒められて。」
「脳味噌、腐ってるんじゃないの?」


パーティーに合わせて黒いスーツをビシッと着こなしたデスマスクは、いつものチンピラな彼とは桁違いに格好良かった。
長身に長い足、抜群のスタイル。
銀色の髪と紅い眼は、嫌でも人の目を惹き付け、視線を集める。
でも、心が一瞬だけ動いたのも束の間、口を開いた彼はいつものままで、腹立たしさは二倍以上だった。


でもって、やはりと言うべきか、そんなデスマスクはパーティー会場で女性達の熱い視線を集め。
私が気付いた時には、その姿は見える範囲にはなかった。
どこぞの可愛い御令嬢とでも、会場を抜け出したんだろうか?
そんな事を考え、苛々した心を鎮めようと新鮮な空気を吸いに外へ出たのが間違いだった。


「捕まえたぜ、姉ちゃん。もう逃げらんねぇよぉ。」
「どうする? 殺せって命令だが、こんな別嬪、ただ殺すのも勿体ねぇだろ?」
「そうだな、このまま連れ帰って、暫くは楽しませて貰うとするか。殺るのは、それからでも遅くない。」


口を塞がれ、手足を拘束され、動けないように押さえ付けられて。
もう、どうにもならない、全てが終わったんだと口を塞いだ男の手の奥で唇を噛む。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、何故か自信満々に笑うデスマスクの顔。
私を守れなかったアイツと、こんな男を付けた沙織さんを、心の奥で恨んだ。





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