「ミャ、ミャ。」
「ミ、ミィ。」


目の前では、シュラ様とアイオリア様が、何やらミャーミャー言いながら、互いの頭やら身体やらをポムポムと触ったり、突っ付いたりしている。
見ているだけでも可愛くて癒されるのだが、それ以上に、艶々でフワフワなお二人を撫で捲りたい衝動に囚われた。


「ミャッ。」
「ううっ、お二人とも反則です。何ですか、この可愛さは。」


結局は欲求に打ち勝てずに、二匹いっぺんに抱っこした私は、心行くまで顔やら身体やらに、頬っぺたスリスリをした。
同じ猫ちゃんなのに、この触り心地の違い。
滑らかなシュラ様に擦り寄るのも捨て難いけど、モコモコなアイオリア様も、また心地良いし。
こ、これぞ、究極の選択というものでしょうか?


「オイ、コラ。一人だからって、ドップリ浸ってンじゃねぇぞ。」
「うわっ?! 吃驚した! で、デスマスク様?!」
「おう。シャワー、使い終わったぞ。オマエも早く済ませちまえ。」
「あ、はい。」


そう言って、デスマスク様は私の腕の中からアイオリア様の身体をヒョイと摘むと、彼を膝の上に乗せてソファーに座った。
そのまま、床から拾い上げたブラシで、クリクリ毛に覆われた全身をブラッシングし始める。
最初こそ嫌がる素振りを見せていたアイオリア様も、直ぐに大人しくなって、されるがままにブラシを掛けられていた。
余程、気持ちが良いのだろう、目を細めてゴロゴロと喉まで鳴っている。


「シュラ様も、やってもらったらどうですか?」
「ミミャ!」


腕の中に抱っこしたままのシュラ様に問えば、ブンブンと首を横に何度も振る仕草。
絶対に嫌だと言わんばかりに、ギャーギャーと唸り声まで上げている。
そんなに嫌がらなくても良いのに。
アイオリア様なんて、あんなに気持ち良さそうにしているのだから。
まぁ、シュラ様のこの毛の短さなら、ブラシで梳く必要もないけれど。


「ミミャ、ミャ、ミャッ!」


それでもシュラ様からの抗議の声が止まない。
どうやら、問題はブラッシングの事だけではないようだった。
デスマスク様が今、着用しているTシャツとハーフパンツ。
シュラ様の服をお貸しした事に対しての文句を吐いているらしい。
でも、仕方ないじゃないですか。
シュラ様の服を着るより他はないのだから。


「ミ、ミャー!」
「大丈夫です。後でちゃんとお洗濯しますし。」
「ミャ、ミャー!」
「デスマスク様にお洋服を貸さないとなると、今夜は裸で過ごす事になりますよ。シュラ様は、それでも良いのですか?」
「ミ、ミャ……。」


裸と聞いて、シュラ様の抗議の声が弱まった。
自分の服を貸すのは嫌だが、この宮の中で裸のまま過ごされるのは、もっと嫌なのだ。
大体、そんな格好で目の前にいられた日には、私だって困ります。


「ミャッ!」
「ん? なンだぁ?」


突然、思い立ってヒョイと身軽に私の腕の中から飛び出したシュラ様は、そのままデスマスク様の座るソファーへと向かった。
最初は、その足元でピシピシと猫パンチを繰り返し、それはやがて恨みを籠めてガリガリと引っ掻く、爪研ぎへと変わっていった。





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