最初は、幼いミロ様とカミュ様の女体化。
次が、シャカ様の丸坊主化。
それから、アイオリア様のソプラノボイス化。
そして、最後――、今回がシュラ様とアイオリア様の猫化。


何というか……、ソプラノボイス化から猫化の間に、恐ろしい進化を遂げていますよね、アフロディーテ様の毒薔薇の威力。
今回は可愛い猫ちゃんになったのだから、まだマシだと思うけれど。
これが猛獣の類になってしまうような事になったら、彼等が聖闘士と気付かれる前に、他の聖闘士によって退治されてしまう可能性だってある。
それを思えば、まだ猫で良かったのだわ。


「ミ、ミィ……。」
「アイオリア様?」


と、それまで私の手に擦り寄っていたアイオリア様が、グッスリと寝ているシュラ様の身体の隙間から、ポムポムと膝を叩いてきた。
何事かと見下ろせば、何かを訴えかけるように小さく鳴いて、私を見上げている。
しかも、大きく見開かれた瞳は涙目で、全身が小刻みにフルフルと震えているではないか。


「え? ど、どうしたのですか、アイオリア様?」
「ミ、ミィィ……。」


我慢出来ないくらい部屋が寒いのかしら?
それとも、何処か痛いところでもあるとか?
慌てて、頭や背中を撫で擦って上げるけれども、全く震えは止まらない。
それどころか、徐々に大きくなっていく全身の震え。


「なしたよ、アンヌ?」
「あの、デスマスク様。アイオリア様が震えているんです。撫でても止まらないし、どうしちゃったんでしょうか?」
「あー、どれどれ……。あぁ、こりゃ、アレだ。」
「アレ?」
「おう、ちょっと待ってろ。」


そう言うと、デスマスク様は、震えの止まらぬアイオリア様を小脇に抱えて立ち上がった。
次いで、私の膝の上で丸まって寝ていたシュラ様の頭を乱暴に引っ叩く。
勿論、すっかり安眠中だったシュラ様は、最悪に機嫌の悪い声を上げて目を覚まし、頭を上げた。


「ミ、ミギャ!」
「煩ぇよ、黒山羊。いや、今は黒猫か。オマエも、ちょっと来い。」
「ミギャー!」


ご機嫌斜めなシュラ様を半ば無理矢理に、反対の小脇に抱えて、そそくさと部屋を出ていくデスマスク様。
後に残された私達は、呆然と彼等が出ていった扉を眺めるしかない。


「何処へ言ったのでしょうか?」
「さぁな。ま、直ぐに戻ってくるだろ。」
「しかし、あれだな。猫というのは意外に大人しく……、可愛いものだな。もっと自由奔放なものだと思っていたが。」
「いや、サガ。あれは中身がリアとシュラだからだろ。普通の猫じゃ、ああはならんと思うぞ。」


それ以前に、シュラ様に至っては、十分に自由奔放っぷりを発揮していると思いますが。
まぁ、ギリギリ他人には迷惑を掛けてはいないけれど、私は相当に好き勝手やられてます、はい。


「アンヌ。」
「はい、何でしょうか?」
「あの子達が元に戻るまで、私が預かっては駄目か?」
「お、おい。サガ!」


サガ様……、猫に癒しを求めるくらいにお疲れなのですね、分かります。
あの猫ちゃん達、た、谷間に顔を埋めてきたりしなければ、本当に可愛いですもの。


「アホか。アンタに猫の世話が出来るかっての。」
「あ、デスマスク様、お帰りなさいませ。」
「ミャーン!」
「ミィ!」


部屋に戻ってくると同時に、デスマスク様の腕の中から飛び出して、部屋の中を元気に駆け回り始める猫ちゃん二匹。
バタバタグルグル、見ていると、それこそ目が回りそう。


「全然、大人しくないだろ、サガ。」
「そうだな……。」


さっきまで大人しく座っていたのが嘘のように、私達の座る応接ソファーの周囲を何周もグルグル回って、追い駆けっこをしているシュラ様とアイオリア様。
そんな二匹の猫ちゃんを見遣り、サガ様は大きな溜息を吐いた。



→第4話へ続く


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