3.真相を求めて



――ドタドタドタッ!


「あ、あの、デスマスク様。もう少しお静かに……。」
「ミャンッ。」
「ミィッ。」


夕方を過ぎ、人気が少なくなったとはいえ、ココは厳かなる教皇宮。
こんな風に乱暴な足音を立ててズカズカと突き進むなんて、礼儀がないと怒られてしまいそう。
大体、ココまで来たなら、もう彼に抱き上げられている必要もないのに。
殆どの官人や女官達が帰宅しているとはいっても、誰もいない訳じゃないのだから、兎に角、恥ずかしい。
擦れ違う人の唖然とした視線が、ビシビシと突き刺さってくる。


それはそうよね。
デスマスク様が私を抱き上げて廊下を歩いているだけでも驚きなのに、更に私の腕の中には、猫ちゃん二匹を抱いているのだもの。
物珍しさに振り返るのは当たり前。


「あの、お、降ろしてください。もう一人で歩けますから……。」
「ミャ、ミャッ!」
「煩ぇ! オマエ等は黙ってろ!」


お、お前等?!
という事は、私まで、シュラ様やアイオリア様、猫ちゃん達と一緒くたにされちゃっているの?!
それは酷い。
いえ、そんな事を言っては、シュラ様達に失礼になるけれど、でも、猫ちゃんと同レベルって……。


「お、降ろしてくだされば、黙りますけど!」
「面倒臭ぇ! オラ、着いたぞ!」


――ズガーン!


執務室に辿り着いたは良いものの、私を抱えているせいで両手が塞がっているデスマスク様は、そのままご自慢の長い足でもって扉を蹴り開けた。
バキバキッと、扉が砕けた破壊音が、静かな教皇宮にこだまして響く。


「オイ、サガッ! お、丁度良い。アイオロスもいるな!」
「どうした、デスマスク? ん、アンヌ?」
「何でデスマスクがアンヌを連れているんだ? いや、それよりも――。」


サガ様とアイオロス様、二人の視線が私と、私の腕の中にいる二匹の猫ちゃん達に注がれる。
廊下で擦れ違った人達と同じく、その顔は唖然としていた。


「この猫だがな。コイツ等、シュラとアイオリアだ。」
「…………は?」
「だーかーらー。黒くてシュッとしてンのがシュラで、金茶のモコモコがアイオリア。分かるか?」
「ミャッ。」
「……ミィ。」


漸くデスマスク様の腕の中から降ろしてもらえた私に抱かれたまま、シュラ様がヒョイとお二人に向かって右の前足を上げてみせる。
アイオリア様は猫の姿になってしまったのを、兄であるアイオロス様に見られた事が、余程恥ずかしいのか、俯きながら小さな鳴き声を上げた。


「デスマスクよ。お前、頭がおかしくなったのか? その猫がシュラとアイオリアだと? 冗談キツいぞ。」
「俺が冗談で、ンなアホな事、言うかっての。嘘じゃねぇ。マジでコイツ等、シュラとアイオリアだ。」
「ミャッ!」


――シュパッ!


名前を呼ばれ、また元気良くお二人に向かって手を上げてみせるシュラ様。
うん、完全に固まってしまっているわね、サガ様もアイオロス様も。
シュラ様を見る目が点と化しているもの。
ならばと思い、シュラ様を目の前の応接テーブルに降ろして上げると、その上をトコトコと渡って歩いていく。
そして、サガ様の前でピタリと止まり、前足をヒラリと一閃。


「ミャンッ!」
「うおっ?!」


ヒュンと空気が斬れる音が響く。
すると、サガ様が手にしていた書類がパラリと二つになり、ひらひらと宙を舞って床に落ちていった。





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