2.さて、どうしましょう?



「ミャ、ミャン。」
「ミ、ミー。」


か、可愛い。
シュラ様とアイオリア様、二匹の猫ちゃんが向かい合って、何か会話らしきものをミャンミャンと交わしている。
猫同士だから、鳴き声で言葉が通じているのだろうか?
あまりの可愛さに、思わず手が伸びてしまう。
二匹一緒に頭を撫で撫でしたい。
でも……。


「ううっ。アイオリア様、未だに電気でパリパリしてる……。」


金茶の長い毛足は、強い静電気を帯びて、パリパリと逆立っている。
今、触ったら、きっと先程のデスマスク様みたいになってしまうわよね。
でも、触りたい、凄く触りたい……。


「ミャッ。」
「わっ?! しゅ、シュラ様! 今、アイオリア様に触れたら危な――、あれ?」


アイオリア様に触れる事を躊躇う私を後目に、シュラ様がアイオリア様の頭に、スッと前足を伸ばして置いた。
一瞬だけ「危ない!」と思ったのだが、どうやら何にも起きない模様。
そのままポンポンと何度も頭を叩くように撫でている。
まるで後輩を労う先輩の図。
ちょっと偉そうな様子のシュラ様と、目を細めて、それを受けているアイオリア様。


その内、アイオリア様の方も前足を伸ばして、シュラ様の肩にヒョイヒョイと手を掛けた。
気付けば、お互いに手を出し合って、じゃれ合いながら床を転がっているではないか。
何これ、すっごく可愛いんですけど!
可愛過ぎてキュンキュンしちゃうんですけど!


「……オイ。コラ、アンヌ。」
「わっ?! で、デスマスク様、何ですか?」
「猫見て悶絶してるトコ悪ぃが、ありゃ、シュラとアイオリアだぞ。猫の姿してれば心和む光景にもなるが、アレを人間の姿に置き換えてみろ。とんでもねぇ、ヤベぇ光景だろが。」


言われて、目の前の二匹の猫ちゃんを、脳内で人間の姿のシュラ様とアイオリア様に置き換えてみた。
うん、確かに、色々と怪しい匂いのする光景だけれども……。


「いつも、そんな感じですよ、あのお二人……。」
「ぁあ? いつもぉ?」


互いへの罵倒の言葉を吐きながら、光速腹筋の回数を競ったり、相手の背中に無理矢理に圧し掛かって、有り得ない回数の腕立て伏せをやらせたりとか。
こんな感じで、常にじゃれ合いながら二人で鍛えている。
雨の日とかに、部屋の中で頻繁に見掛けるトレーニング風景だ。


「大バカだな、コイツ等……。」
「でも、何だかんだで楽しそうです。思い切り罵詈雑言ばかり吹っ掛け合っていますけど。」
「つか、罵り合いの、そもそもの原因はオマエだろが。」
「……え?」


――ビシッ!


「い、痛っ!」
「そりゃ、オマエの鈍さの分だ。」
「ええっ?!」


何の事かと問い返す間もなく、隣に寄ってきたデスマスク様に、容赦ないデコピンを喰らわされる。
うぅ、痛い……。
これ、地味に痛いんですけど!


「ミャッ!」
「ミィッ!」
「ぁあっ?! 何だ、オマエ等?! あぁ、ウゼぇっ! 邪魔だっつーの!」
「ミャ、ミャン!」


私が額を押さえて蹲った途端、それを見咎めたのか、それまで仲良くじゃれ合っていた筈のシュラ様とアイオリア様が、揃ってデスマスク様の左右の肩に飛び掛かった。
あ、もしかして二人(二匹)共、私の代わりに反撃してくれているのかな?
デスマスク様が嫌がれば嫌がる程、背中から首、頭や腕などに執拗に纏わり付く二匹の猫ちゃんの姿は、先程とは、また別の意味で和んだ。


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