この子も可愛い。
凄く可愛い。
シュラ様とは、また全然タイプの違う猫ちゃんだけど、可愛い事に変わりはない。


私が頭から首・背中と撫でて上げると、心地良さそうに目を細める。
フワフワな金茶の毛は、ちょっとだけクリンと丸まった癖毛で、シュラ様の触り心地がビロードの絨毯なら、こちらはラビットファーのマフラーと言ったところ。
触れた感じでは、シャープな身体付きのシュラ様よりは、ガッチリと筋肉質で骨太そうだ。
そして、クリッと丸い瞳の色は、美しいエメラルドグリーン。
シュラ様と、この猫ちゃんと。
同じ猫でありながら全く違う外見の二匹が並んで座る姿を正面で眺めていると、愛らしい姿に、見ているだけで癒されてくる。


「オイ。間違っても、その猫、抱っこしてぇとか思わねぇ方がイイぜ。」
「え、どうしてですか?」
「シュラを見りゃ、分かンだろ。」


言われて、大人しく座っていたシュラ様に目を遣った。
ジッとコチラを見上げている顔は、猫であっても無表情。
だが、妙にピリピリとしているのが雰囲気で分かる。
それに、ただ座っているだけのように見えるけれど、この全身のバランス、力の入り様。
私がこっちの猫ちゃんを抱っこした瞬間に、飛び掛る気、満々だわ。
しかも、私にではなく、この猫ちゃん目掛けて飛び掛ってくるだろう。
下手をしたら、この猫ちゃんが聖剣(猫仕様)の餌食にされかねない。
私は涙を飲んで、猫ちゃんを抱っこしようと伸ばし掛けていた腕を引っ込めた。


「あー、見た目はアイオリアっぽいな。」
「そうですね。あ、取り敢えず確認を。」


私は金茶の猫ちゃんの両脇に手を入れると、シュラ様の時と同じく、その身体をブラーンと目の前に翳した。
横に座っていたシュラ様は、その光景を黙って見ている。
ただし、何かあった時には直ぐに飛びかかれるよう、体勢は少しも崩していない。


「あ、この子も雄ですね。」
「ミッ?!」


雄だと言った途端、金茶の猫ちゃんは驚いたように短い鳴き声を上げ、それから身を捩って私の手から逃れるように飛び降りた。
そのまま、傍に立っていたデスマスク様の足元へと一目散に駆けて行き、その後ろへと身を隠してしまったではないか。


「あれ? 急にどうしたのでしょう?」
「どうしたっつーか、恥ずかしかったンだろ。」
「恥ずかしいって、何がです?」
「オマエに股間をジッと見られた事がだ。コイツがアイオリアなら、余計に恥ずかしかっただろうぜ。」
「っ?!」


いやいやいや!
だって、相手は猫ちゃんですし。
そんな恥ずかしがる事なんてないと思いますけど?!
シュラ様なんて全然、平気そうでしたよ、見たところ、かなりの興奮気味でしたし。


「変態なシュラとコイツを一緒にしてやるな。ただでさえ奥手だっつーのに、猫の姿とはいえ、長年、想い続けてる女にアレを見られたとあっては、ショックを受けンのも仕方ねぇ、そうだろ?」
「は、はぁ……。」


どうもシュラ様を基準に考えがちな私には、いまいち良く理解出来ないが、デスマスク様が言うのだから、そうなのだろう。
もし、この猫ちゃんがアイオリア様なら、彼には申し訳ない事をしてしまった。
謝罪の代わりに、警戒されないようソッと近付き、デスマスク様の足の後ろへと隠れている猫ちゃんに手を伸ばす。
頭に手が触れると、一瞬、ビクリと身体を強張らせたが、ゆっくりと撫でている内に「ミー。」と心地良さ気な鳴き声を上げてくれるようになった。





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