闇のリズム的にゃんぱにな日常生活



「ミギャー!!」
「わあぁっ! こらこら、シュラ様! シュラ様ー!」


ヒョーイと身軽に飛び跳ねて逃げ回るのは、月イチのアレ(苦笑)で黒猫姿と化したシュラ様。
それをヨタヨタ・ヨロヨロと追い駆けるのは、運動神経においては非常に鈍臭い私。
猫ちゃんといえど黄金聖闘士のシュラ様を捕まえるなど到底無理な話で、あっという間にキャットタワーの最上段に上がって、私の手の届かないところへと隠れてしまう。


「シュラ様ー! 下りてきてくださーい!」
「シャー!」
「逃げても駄目です、ほら!」
「キシャー!」
「……邪魔するぜ、アンヌ。……って、何やってンだ、オマエ等?」


タイミングが良いのか悪いのか。
こういう時に限って必ず現れる御人・デスマスク様。
タワーの上を見上げて必死に呼び掛けている私と、目をキリキリと吊り上げた怒り顔を突き出して真上から威嚇してくるシュラ様を交互に見遣り、呆れの溜息を吐く。


「爪切りをしようとしたら、嫌がって逃げてしまったんです。」
「あ? 爪切り?」
「暫くサボっていたんですよ、シュラ様ったら面倒臭がって。人の姿の時は、それでも問題なかったんですけど、猫ちゃんの姿になったら色々と危なくて……。」


私は左の肩から鎖骨に掛けて黒猫姿のシュラ様に付けられた引っ掻き傷を、デスマスク様に見せた。
抱っこを強請って飛び付いてきたシュラ様をキャッチした際、その伸びた爪でガリッとミミズ腫れになってしまったのだ。
露出の多い女官服の弊害ですね。
このままシュラ様の伸びた爪を放っておいては、私の腕やら首やらアチコチに傷が出来てしまいます。


「別にイイじゃねぇか。他の男に見せるワケでもねぇし。責任取ンのシュラだし。」
「そうは言っても、私も女ですから、傷が出来るのは嫌です。痛いのも嫌です。」
「ほぉ〜……。」


こんな事なら、先日、人の姿の時に爪切りをして上げれば良かった。
シュラ様に切って欲しいと頼まれたのだが、色々と忙しくて、「自分で切ってください。」と、突っ撥ねたのが悪かったんだわ。
などと考えている間に、ピョーンと一跳ね、高くジャンプしたデスマスク様が、キャットタワーの上のシュラ様を華麗に捕まえて、ストンと音もなく着地していた。
お〜、流石は黄金聖闘士様、素晴らしい身のこなし。


「ミギギャー!」
「あ〜、うっせぇ、うっせぇ。」
「ギギャー!」
「少し大人しくしてろ。じゃねぇと、その細ぇ首を絞めて落としちまうぞ。」
「で、デスマスク様、それはちょっと……。」
「イイじゃねぇか。気絶してたら抵抗もされねぇし、サクッと爪切りも出来ンだろ。」


確かに、爪切りは楽に出来るかもしれませんけれども。
可哀想じゃないですか、絞め落としなんて、余りにも。
動物虐待と取られても、おかしくないですよ。
シュラ様が動物に分類されるかどうかは、怪しいところですが。


「さっきみてぇな悲鳴上げて嫌がる猫を、無理矢理に押さえ付けて爪切りする方が、よっぽど虐待してるっぽいけどな。」
「そ、それは……。」
「つー事で、シュラ。俺に絞め落とされてぇか、それとも、大人しく爪切りされンのを受け入れるか。どっちにするよ?」
「ミャ、ミミャミャ……。」


ソロソロと右の前足を私の方に向かって差し出すシュラ様。
その顔は本っっっっ当に不本意そのものだったが、デスマスク様に絞め落とされる屈辱よりもマシだと思ったのだろう。
嫌々ながらも大人しく爪切りを受け入れる覚悟を決めたらしかった。





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