あ、そうだわ。
猫ちゃん達の涼む姿を、ボンヤリと眺めていては駄目でした。


「ミロ様、これを。」
「……ん、団扇?」
「猫ちゃん達と氷山を挟んで向かい合わせに座っていただいてですね……。」
「え、何、何?」


そこから団扇でパタパタすると、風に氷山の冷気が含まれて、より猫ちゃん達が涼しくなるのだ。
さっきから私がパタパタと風を送っていたのだけど、流石にちょっと腕が疲れてしまった。
デスマスク様は意地悪なので、少しも交代してくれないですしね。


「そういう事なら俺が扇いでやるよ。ほらほら、気持ち良いか〜? シュラ〜、アイオリア〜。」
「ミー。」
「ミャー。」
「イイよなぁ、オマエ等。到れり尽くせりでよぉ。俺の方にも、ちっと風を分けてくれよ。」
「自分で扇げよ、蟹。つか、何でこの団扇、蟹の絵なんだ?」


そこは突っ込まないで上げてください、ミロ様。
デスマスク様も、それを最初に見た時は、嫌な顔をしていましたから。
でも、紫龍くんからの頂きものなので、乱暴な事も出来なかったみたい。


「ミャッ。」
「あ、シュラ様。駄目ですよ。」


うっかり油断して目を離していた隙に、それまで微動だにしなかったシュラ様が、いつの間にか動き出していた。
右の前足をソロソロと伸ばし、少しずつ溶け出して汗を掻いた氷山に、その手で触れようとしているではないか。
幾ら全力で作ったものではないにしても、カミュ様の作り出した氷だ。
下手に触れば、低温火傷になりかねない。


「キシャッ!」
「おーおー、言わんこっちゃねぇな。バカじゃねぇの。」


触った瞬間の凄まじい冷たさに、吃驚して手を引っ込めたシュラ様。
その前足を身体の前でプルプルと震わせる仕草といい、ギュッと顰めた顔といい、コミカルなのだけれど、何故かとても可愛らしい。
しかも、「お〜、ちべたっ!」と言っているのが目に見えて分かって、思わずクスッとしてしまう。


「ミー。」
「まさかアイオリアもやるつもりなのか? 止めとけって。同じ目に遭うだけだって。」
「ミー。」


ミロ様の制止も聞かず、負けじと前足を氷山に伸ばすアイオリア様。
そして、触れた刹那に、ビクッと驚きで手を引っ込め、プルプルと震わせるという、シュラ様と全く同じ結果に辿り着く。
そんな姿を見て、ミロ様もデスマスク様も大きな呆れの溜息を吐いた。
本当に負けず嫌いですよね、お二人とも。
互いに互いの行動を見て見ぬ振りが出来ないなんて、大人げないと言うか、子供っぽいと言うか。
まぁ、今は子供ではなく、猫ちゃんになっていますけど。


「張り合うのも程々にしてくださいね。」
「ミャッ。」
「ミイッ。」


猫ちゃん達に近寄り、二匹一緒に頭を撫で撫でして上げる。
すると、冷気で涼んで元気になったのか、右側からシュラ様、左側からアイオリア様が、抱っこを強請って私の膝によじ上ってきた。
ううっ、暑い……、重い……。


「ミミャッ。」
「す、スリスリしないでください、暑いんですから。」
「ミイッ。」
「わ、肉球、冷たっ!」
「ミャン。」
「や、ちょっと何処を触っているんですか、シュラ様?!」


猫ちゃん達はいつでも何処でも可愛いですが、真夏の暑さの中ではキツいです。
もふもふじゃなくて、もわもわです。
もわもわ、もわもわ。


「頑張れ、アンヌ。こっちから扇いでやるから耐えろ。」
「あ、ありがとう御座います、ミロ様。涼しいです、多少は……。」
「猫に好かれるってのも、イイ事ばっかじゃねぇなぁ。ま、ガンバレよ、アンヌ。」


団扇で扇いで自分に風を送りながら、カラカラと笑うデスマスク様。
睨み付けたところで、暑さは変わらない。
私は諦めて、抱っこしている猫ちゃんの背中をポンポンと叩いたのだった。



真夏のニャン!
もふもふは暑い!



‐end‐





ニャンコは可愛いですけど、真夏の毛むくじゃらからのスリスリは、絶対に暑いです(苦笑)

2017.07.17〜2017.07.27



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