「カボチャねぇ……。本当にそんなもので元に戻るのかい?」
「戻るかどうかは分かンねぇよ。あくまでも可能性の一つってだけで。」
「もし、この猫化の原因が私の薔薇毒だったなら、そんなカボチャ如きで解毒されるとは思えないけど……。」


そりゃあ、そうですよね。
薬の開発者が御自身であれば、認められないですよね。
ただのカボチャが解毒薬だなんて事は。


「何にしても可能性は一個ずつ潰していく必要はあるだろ。低い・高いは関係なく、な。」
「ダメ元でやってみるという訳ですね。期待はせずに。」
「そゆこと。これで元に戻ったらラッキー程度に思っとけばイイさ。」
「ふ〜ん……。蟹のクセに地道な事をするんだな。」
「蟹は関係ねぇだろ。」


目の前の猫ちゃん二匹の頭を同時にグリグリと撫でながら、デスマスク様は睨むようにアフロディーテ様を見上げた。
が、一方の彼はフンと鼻を鳴らして、そんな視線はやり過ごす。
まぁ、いつもの二人だ。
本来ならココにシュラ様も加わっているのだが、今は黒猫姿で頭を撫でられて目を細めている。
ほらほら、そんなに猫ちゃん姿を謳歌していないで、可能性の一つを試してみましょう。


「おら、シュラ。オマエのそのヘナチョコ猫聖剣で、このカボチャを斬ってみろ。」
「ミギャッ!」
「ヘナチョコではないと言ってるようだけど?」
「そこに噛み付いてる場合じゃねぇだろ。文句なら元に戻ってから聞いてやるから、早くやれ。」
「ミギャー!」


しゅぱぱぱぱっ!


元より細い目を怒りで更に細め、御機嫌斜めの黒猫ちゃんは右前足・左前足を華麗に振り回し、堅いカボチャを切り刻む。
おおー、相変わらず見事なスクエアカット。
これまで黙って様子を眺めていたアイオリア様が、パチパチと瞬きを繰り返して、床に転がるカボチャをツンツンと突っ付いた。


「ミイッ。」
「はいはい、何か作りましょうね。何が良いですか? 何が食べたいです?」
「ミッ、ミミミミイッ。」
「ミミャ、ミミャミャッ。」
「……何を言っているのかサッパリ分かりませんが。」


それぞれ好きなカボチャ料理とかスイーツを仰っているんでしょうけれど。
猫語なので、何を欲しているのか想像すら出来ないんですが。
シュラ様は多分、スイーツですよね?


「ミミャッ!」
「分かりました。では、カボチャの蒸しパンにしましょう。」
「分かったのかよ、今ので。」
「ミギャー!」
「アンヌさ。違うって言っているようだけど?」
「そこを気にしていたら、何も作れませんので。」


ミーミーギャーギャーと聞こえてくる鳴き声は無視です、無視。
さぁ、早く作らなきゃ。
カボチャが駄目だった場合は、別の可能性を考えなければいけませんしね。
サクサクと進めますよ、サクサクと。





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