グリグリ。
ウリウリ。


シュラ様の狭い眉間を確実に狙って、人差し指を押し付けるデスマスク様。
顔を左右に振り、長い前足を伸ばして、その攻撃を払おうとするシュラ様。
上手く払ったかと思ったら、また反対方向から眉間に突き刺さってくる指。
一進一退の攻防が続く。


「ミミャッ!」
「無理無理、無駄無駄。その姿じゃオマエに勝ち目はねぇよ。」
「キシャッ!」
「大人しく俺にグリグリされとけって。」
「ミギャッ!」


グリグリされるのが嫌だから必死に振り払っているのではないかと。
そして、抗議の声を上げているのではないかと。
いや、それよりも何よりも。
デスマスク様が左腕に抱えている、その巨大なものが気になって仕方ないのですが……。


「デスマスク。それは何だい?」
「カボチャだ。見りゃ分かンだろ。」
「いや、そういう事じゃなくて……。何でカボチャなんて抱えているんだと、そう聞いているんだ、蟹。」


途端に、アフロディーテ様の声に含まれる棘。
冷ややかな視線。
下等なものを見るような目付きで、上から見下ろす視線が怖いです、アフロディーテ様。
お顔が綺麗なので、余計に迫力があります。


「蟹じゃねぇ。ブン殴るぞ、オカマ魚。」
「ブン殴れるものなら、殴ってみなよ。返り討ちにされて、ボコボコになるのはキミの方だよ。」
「わわわっ! 駄目です、ココで喧嘩などしては!」
「ミミッ!」


慌てる私。
その横で、同じく慌てた鳴き声を上げるアイオリア様。
シュラ様だけが我関せずとばかりに、シュッと背筋を伸ばし、目を細めて座っている。


「そう躍起になンなって。いつもの事だろ、俺等の罵り合いは。」
「そうそう。そこの猫共が、事ある毎にミギャミギャと取っ組み合っているのと一緒さ。ま、私達は手を出す事はないけどね。猫パンチを繰り出し合っているシュラ達と違って。」
「ミッ?!」


言われて、尻尾を太くし、毛を逆立てるアイオリア様。
堪えてください、堪えてくださいね。
今の姿で飛び掛かっても、返り討ちにされるだけですから、あの非情な人達に。
お返しするなら人の姿に戻ってからの方が良いに決まっている。
純粋な格闘なら、きっとアイオリア様の方が強いでしょうから。


「はい、落ち着いてください。良い子、良い子〜。」
「流石はアイオリア、単純なヤツだ。アンヌに頭を撫でられただけで、こうも御満悦とは。」
「本人が満足してるんだから良いんじゃないのかい。ね、アンヌ。」
「は、はぁ……。」


それは兎も角として。
そのカボチャは何なのか、その説明を先にお願いしたいのですが。
アイオリア様を抱っこして、私は身を乗り出した。
デスマスク様が抱えたままのカボチャに触れると、横でシュラ様も前足を伸ばし、カボチャの表面をペシペシと叩く。


「こりゃ、アレだ。きっかけ探し。」
「きっかけ?」
「一晩経っても、猫の姿から戻らねぇ。ンで、今はもう夕方近い。て事はだ。一日で元に戻るってのは実は間違いであって、前回の時も、なンか違うきかっけがあったンじゃねぇかって、そう思ったって訳だ。」


なるほど、それで。
確かに、この時間になっても元に戻らないのは変だ。
アイオリア様を抱っこした腕とは反対の手で、シュラの背を撫でる。
前回も何かのきっかけで元に戻ったとしたら、それは何なのか。
それが、カボチャとどういう繋がりがあるというのだろう。
私は納得して頷いた後、浮かんだ疑問に首を傾げた。





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