13.やっぱり終焉は突然でした



静まる部屋の中。
暫くの間、静寂が続いた後、腕の中の猫ちゃんがゴソゴソ身動ぎをした。
それを切っ掛けに、固まっていた部屋の空気が流れ出す。


「ふぅ……。やっと驚異が去ったね。」
「ミャッ。」


アフロディーテ様が抱っこしていたシュラ様を床に放す。
ダダダッと勢い良く走り出す猫ちゃん。
それを見て、自分も走りたくなったのか、アイオリア様が私の腕の中で小さな身体をウズウズと揺らした。


「はいはい。アイオリア様も一走りしてください。」
「ミー!」
「さて、と。これでやっと、ゆっくりお茶が飲めます。」
「マフィンが冷めてしまったね。温め直してこよう。」


アフロディーテ様の親切に甘えて、私はソファーに腰を下ろすと、お茶を一口、二口、喉に流し込んだ。
甘くて美味しい。
疲れが湯気と共にスウッと抜けていくようです。


「ほら、マフィンが温かくなったよ。」
「ありがとう御座います。」
「いやいや、アンヌだって多少はゆっくりしないとね。ヤンチャ猫だけなら兎も角、ヤンチャ黄金まで相手にしているんだから。」


それは先程まで好き勝手やりたい放題だったアイオロス様の事を指しているのでしょうか?
それとも、御自分も含まれています?


「当然、私もその一人さ。キミにしてみれば、私達など皆、大きな子供だろうからね。」
「そんな事は……。」
「そんな事はあるさ。シュラなんて、その筆頭だろう。自己中で、我が儘で、まるで子供だ。クールで大人で素敵だとか女官達に騒がれているようだけど、そんなの見た目騙しだよ。」


確かに……。
見た目も雰囲気も、年齢よりは大人っぽく見えるのがシュラ様だけど、実際のところはアイオリア様と無駄な小競り合いを繰り広げるくらいに子供な人だ。
もしや彼等の中で一番大人なのは、デスマスク様なのでは?


「余り考えたくないけど、そうかもしれないね。ホント、考えたくないけどね。」
「ミッ。」
「何? アイオリアも、そう思うのかい?」
「ミッ。」


いつの間にか、私達の足下に来ていたモフモフの猫ちゃんが、真ん丸な目でコチラを見上げている。
と、ヒョイと私の隣、ソファーの空いたスペースにジャンプして乗ってきた。
スリスリスリスリ。
や、ちょっと、擽ったいです、アイオリア様。
見れば、もっふりとした毛に覆われた小さな顔を入念に、膝に擦り付けている。


「ミミャッ?!」
「ほら、誰よりも子供っぽいヤツが気付いて、嫉妬の声を上げてる。」
「ミャー!」
「わっ?! やっ、擽ったいです!」


嫉妬か、張り合いか。
反対側に乗ってきた黒猫ちゃんが、反対側の膝にスリスリを始める。
ひ、髭がチクチクと……。
しかも、競うように物凄い勢いでスリスリを……。


「ミャッ!」
「ミーッ!」


パシパシパシッ!
ビシビシビシッ!


しかも、スリスリの合間に、私の膝を挟んで猫パンチの応酬をしていますけど。
何ですか、これ?
何なのですか、この光速スリスリと、光速猫パンチは?


「はーい、はい。そこまでー。」
「ミミャッ?!」
「ミミミッ?!」
「折角、アンヌがゆっくり休もうとしてるのに、邪魔しちゃ駄目だろう。両側から膝スリスリなんてされたら、マフィンを食べる隙すら出来ないじゃないか。」


アフロディーテ様の両手には、首根っこを捕まれてプラーンとぶら下がる猫ちゃん二匹。
また元に戻ってしまいましたね。
学習能力がないのか、反省する気がないのか……、困った猫ちゃん達です。





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