8.猫のいる日常



夕方。
執務を終えたデスマスク様が磨羯宮に顔を出した頃には、猫ちゃん達も私達も、すっかりまったりモードに突入していた。
ミロ様とカミュ様は、次の任務の資料を眺めながらお茶を啜っていたし。
猫ちゃん達に至っては、大きなビーズクッションの上で、ひと塊になって眠っていた。
普段は我関せずと遠くから眺めているカプリコちゃんも混じって、見事な猫団子状態。
アイオリア様はシュラ様の、シュラ様はカプリコちゃんの、カプリコちゃんはアイオリア様のといった具合に、互いのお尻を枕にしてグースカと寝息を立てている。


「おーおー。随分と平和な光景なこって。」
「デスマスク様、お帰りなさいませ。お疲れ様でした。」
「執務の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫だろぉ、多分。」


クワワッと欠伸をしながら、寝ている猫ちゃん達の背中をワシワシと撫で回した後。
勝手知ったる何とやらで、キッチンに入り込んだデスマスク様は、自分用にインスタントコーヒーを淹れて戻ってきた。
シュラ様も私もコーヒーは飲まないので、完全にデスマスク様のためだけに置いてあるコーヒーだ。


「激務に追われてるサガの様子を見て、流石のアイオロスも反省したみてぇだしな。今日のところは二人で遣り繰りすると言ってたから、ま、なンとかなンだろ。」
「本当に大丈夫か? 正直、ロスにぃは執務の事になると信用出来ん。」


確かに。
午前中、ココで見せた一人で勝手に暴走したり、激しくイジケてみたりの我が儘放題なアイオロス様を見てしまっては、真面目に働くと言ったところで信用するのは難しいかも。
猫ちゃん(特にアイオリア様)に会いたくて、執務を抜け出してくる姿が容易に想像出来るから、余計に。


「次に勝手な行動取ったら、全裸に引ン剥いてアテナ神像の前に磔にして曝してくれると、サガが目を釣り上げて威嚇してたからな。大丈夫じゃねぇの?」
「全裸で磔って……。」
「しかも、神聖なるアテナ神像の前に……。」


御自身がシュラ様と戯れていた事は棚に上げて、なかなか過激な発言ですね、サガ様。
黄金聖闘士ともなると、これくらい過激な強硬手段も日常茶飯事なのでしょうか。


「いやいやいや、アンヌ。黄金聖闘士、全部一緒にしてもらったら困るから。サガ達が特殊なだけだから。」
「そうなのだ。サガとアイオロスが特殊であって、我々の思考は至って普通なのだ。なぁ、ミロ。」
「うんうん、そうそう。」
「そうかぁ。十分、異常だろ。俺も含めて全員おかしいってのが黄金じゃね?」


ピキリと固まるミロ様とカミュ様。
一人、ゆったり余裕の様でコーヒーを啜るデスマスク様。
凍り付くという事は、それなりに自覚はあるのですね、お二人共。


「後は俺が居るから、オマエ等、帰ってイイぜ。ごくろーさん。」
「あ、あぁ、そうか。では、戻るとしよう。」
「悪いな、デスマスク。後は頼んだぞ。」
「いっつも面倒事の処理は俺が押し付けられてンだし、今更、今更。気にしてねぇで、とっとと帰ンな。」


そういう言い方をしては、余計に気にすると思うんですけど……。
いや、分かっていてワザと言っているのでしょうね、この人の事だから。
眠る猫ちゃん達を一頻り撫で回してから、部屋を出ていくミロ様、カミュ様。
静かになった部屋には、フガフガと上がる黒猫シュラ様の寝言と、デスマスク様がコーヒーをズズッと啜る音だけが響いていた。





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