がさがさ。
ばたばた。
ごそごそ。
ぴょこっ。
きょろきょろ。


「ミャン!」
「……すっかりお気に入りの遊びになったようですね。」
「何て言うか……、心までも完全な猫になっちゃったんじゃないのか、シュラの奴。」


如何にも猫らしく遊ぶ姿は可愛いけれど、中身は黄金聖闘士のシュラ様なのだ。
そう思うと呆れるばかりなのだが。
いや、でも、見ていて癒されるから、まぁ、良しとしましょう。
などと思っていると、横にいたアイオリア様がトントンと私の足首辺りを前足で突っ付いてきた。


「どうかしました、アイオリア様?」
「ミイィ……。」


アイオリア様はお行儀良く座ったまま、まん丸な目でコチラを見上げてくる。
無邪気に遊ぶシュラ様も可愛いですが、大人しく何かを訴えてくるアイオリア様も破壊的に可愛いですね。
二匹(いや二人?)纏めて抱っこして、心行くまで頬摺りスリスリしたいです。
ギューッと抱き締めて、わしゃわしゃ撫で回したいです。


「ミ、ミイィィィ。」
「もしかして、アイオリア様も紙袋遊びをしたいんですか?」
「ミイッ!」


元気いっぱいに右の前足が上がる。
アイオリア様が大人しく眺めていたのは、興味津々だったからだ。
紙袋……。
確か捨てずに保管しているのものが幾つかあった筈。
普段は余り使っていない自分の部屋に探しに行くと、クローゼットの中から丁度良い大きさの袋が見つかった。
……女性下着メーカーのものだけど、まぁ、気にしない事にしましょう。


「アイオリア様。さぁ、どうぞ。」
「ミイィッ!」


――ズササササッ!


中に入り易いよう、横に倒して床に置いて上げると、物凄い勢いで紙袋の中に滑り込むアイオリア様。
その勢いに押されて、紙袋ごとシュルルルと床の上を滑っていく。
それが余程、楽しかったのだろう。
お尻を振り振り、バックして紙袋から出てきたアイオリア様は、また勢いをつけて、紙袋の中へと頭から突っ込む。
私の視界の中を、右へ、左へ。
紙袋ごと滑っていくアイオリア様。


「これまた見事なスライディングだなぁ……。」
「シュラ様とは違う遊びになっちゃったみたいですね。」
「ミャッ?!」


その気配に気付き、ゴソゴソ紙袋の中で暴れていたシュラ様が、ひょっこり顔を出す。
そして、新たな紙袋遊びを満喫するアイオリア様を見止めて、早速、シュラ様も同じ遊びを始めた。
シュルルルと床を滑っていく二つの紙袋。
袋の口から伸びた後ろ足の先端と、尻尾の先端が少しだけはみ出しているのが、また何とも可愛らしい。


「オイオイ。なンだ、こりゃ? どうなってンだ、アンヌ?」
「あ、お帰りなさい、デスマスク様。」


宮の外へ、猫化の原因に関係しそうな事をアレコレ探って戻ってきたデスマスク様。
足下の床で、紙袋に頭からスライディングする猫ちゃん達が、そのまま紙袋ごと滑っていく姿を、彼は呆れた様子で見下ろした。
いつもの癖でバリバリと銀の髪を掻き毟り、やるき無さ気に溜息を吐く。


「アホなヤツ等だな、オイ。こンな事の何が楽しいンだか。」
「猫ちゃんになったら楽しいのかもしれませんよ。猫の気持ちは猫にしか分からないですしね。」
「そうかよ。で、アッチは?」


アッチ?
疑問に思いながら、デスマスク様が顎で指し示した方を見遣る。
そこには部屋の隅で落ち込んだままのアイオロス様の姿。
そして、未だ床に『の』の字を書き続けているその背中に、何故かカプリコちゃんがヨジヨジとよじ登っていた。


「いつの間に、あのような事に……。」
「シュラ達に気を取られて気付かなかったな……。」


取り敢えず、意気消沈中のアイオロス様は、このままカプリコちゃんに任せておくとして。
ミロ様と私は、デスマスク様の探索結果を聞く事にした。
紙袋遊びに夢中なシュラ様とアイオリア様は、暫くは放っておいても良いだろう。





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