リビングで過ごす夜の時間。
長ソファーの上、右にシュラ様、左に私が座って、寄り添っている。
だが、大きく開かれた彼の足の間、何故かそこに猫ちゃんがチョコンと丸まっていた。
両手両足を身体の下に仕舞い込み、まるで猫の頭の付いた小さな箱のような可愛らしい格好で、横の私をジッと窺い見ている。


「何だか視線が痛いです。二人分の視線がビシビシと……。」
「二人?」
「ミャン。」
「えぇ、二人です。」


いつもならばシュラ様の、そういう雰囲気を漂わせた視線だけであるところに、今夜はもう一つ、興味津々に見上げてくる猫ちゃんの視線が加わっている。
正直、とても居心地悪いというか、気まずいというか。
でも、その気まずさを感じているのは、私だけのようで、シュラ様は普段と変わらない様子で、私の事を流し見て、熱い視線を注いでくる。


「邪魔だ。」
「ミャッ?」


足の間にいた猫ちゃんを摘み上げ、投げ捨てるように床に下ろすと、シュラ様は目にも止まらぬ早さで、私の身体を押し倒してきた。
そのままソファーの上に組み敷かれて、慌ててもがいても、既に身動き一つ取れない。
これが普段通りであれば、このままシュラ様に身を任せてしまっても良いのだが、今は、どうにも気が散ってしまい、素直に彼を受け入れられないでいる。
それもその筈。
私たちの横たわるソファーの真下から、猫ちゃんの泣き声がミャーミャーと響いているのだから。


「し、シュラ様っ。あ、あのっ……。」
「何だ、アンヌ? 何をそんなに抵抗する?」
「だ、だって、カプリコちゃんが……。」
「気にするな、そんな事。」
「気にするなと言われましても……。」


気になるものは、気になるんです。
だって、思い切り見られているもの、物凄く凝視されていますもの!
いくら相手が猫ちゃんとはいえ、こんなにもジッと見られながら、そ、そのような行為に没頭出来る訳がない。


「仕方ない。ベッドへ行くぞ、アンヌ。」
「わっ?!」


少々強引に抱き上げられて、寝室へと運ばれる。
が、背後からはトコトコと後を追ってくる猫ちゃんの気配……。
シュラ様が部屋の灯りを点けた時には、隙を見てドアの隙間を潜った猫ちゃんが、既に意気揚々とベッドの真ん中に座り込んで、私達の到着を待っていたではないか。


「ミャーン。」
「あの……、シュラ様?」


どうしますかと、彼の腕に抱かれたまま返事を待つ。
が、いつもの無表情のまま固まっているシュラ様。
そのまま暫し凍り付いていた彼だったが、大きな溜息と共に動きを取り戻したかと思うと、猫ちゃんの待つベッドの上に私を放り投げた。
そして、自分もズッシリと圧し掛かってくるではないか。
流石に、私も焦った。
だって、直ぐ真横で猫ちゃんがジッとコチラを見ているっていうのに!


「し、シュラ様っ! か、カプリコちゃんが見ています、けどっ!」
「構わん。どうせ追い払ったところで、直ぐに寄ってくるのだろう。ならば、何をしても無駄というものだ。このまま放っておけ。」
「放ってなどおけません。シュラ様が少し我慢してください。」
「誕生日だというのに、何故、俺が我慢せねばならん? 猫の視線など気にするな。」
「ミャーン。」


気にするなと言われても、猫とはいえ他人の視線がある中で、そういう行為をするなんて無理!
絶対に、無理!
何が何でも、無理!


「いい加減、観念しろ、アンヌ。」
「えっ?! やっ! ちょっと、シュラさ――、あっ! ああっ!」
「ミャッ。ミャミャッ。」


そんな訳で、この夜を皮切りに、四日間もの間。
猫ちゃんの視線がビシビシと突き刺さる中で、エッチな行為を強いられるという、とんでもない羞恥プレイを体験する羽目になり。
これに懲りて、もう二度と猫ちゃんや他のペットを預かりはしないと、心に決めた私だった。


――後日。


「アンヌ、先日はすまなかったな。カプリコを預かってもらって。」
「いえいえ、アイオリア様。気にしないでください。」
「実は、戻ってきてからというもの、シュラが獅子宮を通り抜ける度に、カプリコが奴に纏わり付いて、そのまま一緒にくっ付いて行こうとするのだ。シュラが餌付けでもしたのか? 何か知らないか?」
「餌付けなんてとんでもない。ただシュラ様の色気に、たぶらかされただけだと思います。」
「……は?」


シュラ様の魅力は、猫ちゃんを籠絡する程のものなのだと思い知ったのでした。
これからは、他の女官達だけではなく、雌の動物にも気を付けなきゃね。



‐end‐





01.12 HAPPY BIRTHDAY シュラ!
今年も変態暴走上等な山羊さまです、これが我が家の山羊座クオリティーw
そして彼は確実に、ニャンコ視姦プレイにハマッたと思われます(爆)
相変わらずアホでスミマセン^^;

2014.01.14



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