10.終焉は突然に



――ふわあぁぁ……。


午後の時間は、午前にも増して退屈だった。
見れば、ソファーの上に並んで座っていたシュラ様とアイオリア様も、二匹同時に大きな欠伸を零している。


何だかんだで仕事があった午前中は、まだ良かったのだ。
シュラ様達の事を気にしながらも、食事の後片付けやら、お掃除やら、お洗濯やら。
デスマスク様も居てくれる事だし、多少、彼等から目を離しても大丈夫だと、アッチへ行ったりコッチへ行ったりして過ごしていた。
お掃除の時は、シュラ様が執拗に足に纏わり付いて大変だったけれど。
うっかりシュラ様のピンと伸びた長い尻尾を、掃除機で吸い込みそうになってしまったりして。


しかし、それらの家事仕事を終えた今では、もう彼等と戯れる以外は、何もする事が見当たらない。
猫ちゃん達は可愛くて、見ていて飽きないけれど、それでも、お昼寝を始めてしまえば手持ち無沙汰になるし、それに、ずっと彼等と遊んでいる訳にもいかないし。


私はチラリとデスマスク様の方を見遣った。
彼は人の宮だというのに、遠慮もなくソファーの一つに寝転がり、パラパラと雑誌を読み耽っていた。
何でしょう、猫ちゃん達の監視という名目を付けて、執務をサボっているようにしか見えないんですが。
少しだけイラッとしながら見ていると、反対のソファーから飛び降りたアイオリア様が近付き、突然、ヒョイッと彼のお腹の上に飛び乗った。


「ミィッ。」
「あ? なンだ、オマエ?」
「退屈だから遊んでって、言ってるのですよ、多分。」
「ミミッ。」
「違ぇってよ。」


違う?
首を傾げていると、アイオリア様は彼のお腹の上でクルクルと回った後、ストンとその場に伏せて、丸くなって眠ってしまった。


「一緒に昼寝してくれって事だな。」
「一緒にというか、デスマスク様の腹筋ベッドが眠るのに丁度良かったというだけじゃないですか?」
「オイ、俺はモノか? 俺の腹はベッドじゃねぇよ。」


不機嫌に言い放ちながらも、雑誌を片手に持ち変えて、空いた右手でアイオリア様の身体を優しく撫でている。
結局は、この人も猫好きなのだわ、間違いない。


「ミャッ。」
「何ですか、シュラ様?」


気付けば、いつの間にか私の横へと来ていたシュラ様が、膝に擦り寄りながら甘えた鳴き声を上げる。
それから、私を見上げる顔は、明らかに期待の色に満ちていた。


「駄目です。」
「ミャッ?」
「私のお腹は、デスマスク様の腹筋と違って、猫ちゃんの重さには耐えられません。」
「ミャー、ミャー。」
「駄目です。駄目ったら、駄目です。」
「ミャギャッ。」


聞き分けのない猫ちゃんに仕返しを。
私はピンと尖って上を向いたシュラ様の耳を、両耳同時に摘んで引っ張った。
すると、前にも増して変な鳴き声を上げて、身体がビクリと上に跳ね上がった様子が面白くて、思わず笑い声を上げてしまう。


「ミギャー!」
「シュラがキレてンぞ、アンヌ。」
「直ぐに怒るんだから、困った猫ちゃんです。どうして、そんなに短気なのですか?」
「ミミャー!」


私は目を吊り上げて怒る猫ちゃんを抱き上げて、小さな顔に頬擦りをした。
ピンと尖った髭のチクチク感と、艶々した毛の肌触りが絶妙に混じり合った感触は、何とも言えず気持ち良くて。
私は彼の怒りが治まるまで、そのまま顔中にスリスリと頬擦りを執拗に続けたのだった。





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