私を見下ろす彼の瞳が、暗く翳っていた。
肩越しに見える部屋の灯りが、余計に、その翳りを色濃くしている。
いつも、こうして私を押し倒した時は、興奮で紅く爛々と輝いている瞳が、この時ばかりは影を含んでいるように黒く濁って見えていた。


「確かめるって、どうやって? どうすれば食事をしたかどうか分かるの?」
「そンなの、簡単だろが。オラ。」


言って、彼は少しだけ唇を突き出す。
あぁ、そういう事か。
望まれるまま、私は彼の赤い唇に吸い付いた。
開いた唇から舌を潜り込ませて、期待に潤む口内を探る。
歯列をなぞり、歯の裏を滑らせ、舌を絡ませて。


「んっ……。デス、お酒の味しかしないんだけど。」
「嘘吐け。もっと良く確認しろ。」
「ふっ、ん……。」


何事かを言い返す前に、また強引に口を塞がれる。
導かれるまま探るデスの口の中は、さっきまで飲んでいたアルコールの甘さと辛さに満たされていた。
その奥、混ざり合う唾液の向こう側に、食後のコーヒーらしき苦い味。
その更に向こうに、薄らと感じられる、この酸味は……。


「……トマトソース?」
「正解だ。ピッツァを一枚、焼いて食った。」
「デスのピザ? 私も食べたかったな……。」
「明日、また焼いてやるよ。」


言いつつ、私の服を左右に押し開く、躊躇いなく、だけど、ゆっくりと。
露わになった胸元、左右の鎖骨に一つずつキスを落として、それから、また濃厚なキスを仕掛けられた。
その口付けだけで、全ての官能が目覚めてしまうくらい甘美な痺れを伴って。
身に着けている服がもどかしく、邪魔だと感じる程に、押し付けられ、擦り付けられる身体が熱い。


「……ココじゃ嫌。」
「あぁ?」
「ソファーじゃ嫌よ。するならベッドへ……。」
「俺はココがイイけどな。この狭さが一層、燃えンだろ。」


言い合っている間に、上半身は全て露わにされていた。
この手の早さ、巧みさときたら。
それに逆らえない、いや、逆らわない私も私だけれども……。


「デスの悪趣味。」
「あ? 今更、何、言ってやがンだ、オマエ。」
「オマエじゃない、ミカ。」
「うっせー。少し黙れ。」
「あっ……。」


もう一度、深い深い口付け。
唇を押し潰す程の強さで、発火しそうな程の激しさで。
そして、デスの全身で動きを奪われた身体に、突然の熱い衝撃が突き抜けた。
問答無用に始まった愛撫は、素早く的確に、私の快感を引き出していく。


露わになった胸は、デスの厚い胸板を押し付けられて、微かに動く度に、擦れる肌の感触に震えた。
残っていた衣服は、いつの間にか全て剥ぎ取られて、熱く燃える肌と肌が重なる。
身体全体に掛かる、デスのズッシリとした確かな体重。
真っ白な肌に包み込まれ、身動きが取れないままに押し入られる、私の身体の奥へ奥へと。


「はっ……、あっ……。」
「ヤベぇ、ミカ。直ぐにイキそうだ。良過ぎだろ、オマエ……。」
「あ、はっ……、ば、馬鹿っ……。」


何度も繰り返してきた、慣れた行為。
それでも、与えられる快感も、訪れる甘美な瞬間も、その都度、形を変えて私を魅了して止まない。
だから、何度でも溺れたくなるの、不思議な事に。
何度、抱き合っても飽きなんてこない、彼との素晴らしい行為は。


デスの不機嫌の理由は、多分、嫉妬だ。
それもアテナ様への嫉妬。
彼は絶対に認めようとはしないだろうけれど……。


今夜、私だけディナーに誘われた意味、彼は気付いていたと思う。
この人の心を苛んだのは、アテナ様が今更ながらに、私を取り戻そうとするのではないかという、微かな不安と僅かな焦り。
そう思うと、凄く嬉しかった。
意地っ張りで、俺様で、素直じゃないデスが、こんな風にハッキリと嫉妬してくれた事が。





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