旅立ち



家を一歩出ると、眩しい光に目が眩んだ。
夏の太陽は刺激が強過ぎるわ。
特に横にいるのが、暑さと同じくらいの色気を、流れ落ちる汗と共に撒き散らす『彼』であるから、尚更。


「じゃ、ちょっくら行ってくらぁ。」
「道中、気を付けてくださいよ、師匠。コッチの事は心配しなくても、俺一人で大丈夫っスから。何なら、ずっと帰ってこなくても良いっスよ。」
「誰がテメェの心配なんざするかっての、気色悪ぃ。それに俺は聖域に長居するつもりもねぇ。」


あそこは嫌いなんだよ、居心地悪ぃし、横暴な嬢チャンもいる事だしな。
そんな風に、アテナ様に対して平然と暴言を吐くデスに、私は横でただ呆れの溜息を零すばかりだった。
黙ってさえいてくれればセクシーで格好良い男性。
なのに、相変わらず口の悪さはLLサイズ。
折角、盟が心配してくれてるんだから、気持ちだけでも受け取っておけば良いのに。
まぁ、この人にそれを言ったところで、聞きはしないんでしょうけど。


「盟こそ気を付けるのよ。無理な事はしないで、危なくなったら逃げなさい。分かった?」
「ミカ姐さん。それ、聖闘士に掛ける言葉じゃないっスよ。大体、俺はもう子供じゃないんスから。この間、ちゃんと見たでしょ、俺の聖衣。」
「でも、心配だし……。」
「あーだこーだ煩ぇよ、ミカ。本人がそう言ってンだ、放っておけ。」


そう言って、デスは横に寄せて置いてあった荷物の内、一番大きいトランクに手を掛けた。
そういうところばかりは、優しいのよね、見掛けと中身に寄らず。
紳士と見せ掛けてマフィア、マフィアと見せ掛けて紳士。
ホント、面倒臭い人。
まぁ、そんな人を好きになったのも、選んだのも私自身の意志なのだけれど。


「お、そうだ、盟。」
「はい? 何ですか、師匠?」
「オマエ、目当ての女がいンなら、チャンスだぞ。誰もいねぇンだから、連れ込むには持って来いだ。煩ぇのがいねぇ隙に、ヤりたいだけヤっとけ。」
「ちょ、ちょっと! 何、とんでもない事を吹き込んでるのよ、デス! 盟はまだ十代なんだから、そんな事を唆(ソソノカ)してどうするの!」
「年齢なんざ関係ねぇだろ。男はいつでもヤリたい盛りの野獣なンだからな。」


何という俺様な横暴論。
本当に、これが弟子に掛ける師匠の言葉?
耳を疑いたくなるのも当然だ。
私、デスは弟子を育てるのに向いていると思っていたけれど、こういうところは不適応者というか、師匠としてあってはならない発言、そして行動、行為。
聖域中の疑惑と不信を買う訳よね、これじゃあ当たり前に。





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