「飛鳥をデートに誘うなど、シュラに叩き斬られるぞ、ミロ。」
「斬られるならアフロディーテの方が先だろ。俺よりハッキリと『隙あらば奪う』宣言してるし。」


皆が思うよりも、飛鳥の人気は高い。
スイーツオタクである事を除けば、彼女は女の子らしさの典型なのだ。
小柄で華奢で愛らしい。
身体に沁み着いたエッセンスのせいか、いつも甘い香りが漂ってくる。
ニコニコと楽しそうに嬉しそうに笑う様子。
豊かな発想と、思いも寄らないユニークなアイディアを持ち、それ故か、やや天然なところもある。
そこが、また可愛くて、放っておけなくなるのだと言う。


「まだ結婚してる訳でもなし、ただの恋人同士なら、間に割って入って咎められる謂われはない。シュラが何と言おうと、飛鳥はまだシュラのものじゃないんだから。」
「随分と御執心だな。日本人女性ならば、飛鳥じゃなくても良かったんじゃないのか?」
「違う、そうじゃないんだって。」


ミロが言うには、こうだ。
あれから何度か女神の護衛で日本に行く機会があった。
仕事先やパーティー会場などの護衛中に出会った女性、女神の友人や知り合い、城戸家のメイド。
何人もの日本人女性と接触したが、その誰もが彼の心を擽る事はなかった。
そう、恋人にしたかったのは日本人女性ではなく、飛鳥本人だと気付いたのだ。


「という訳で、聖域に帰還して直ぐ、速攻で飛鳥にデートの申し込みをした。」
「で、その結果が、これか? 色良い返事の代わりに、菓子になって返ってきたと。」
「シュラのヤツめ。飛鳥と付き合いたいならば、まずこのくらいは楽勝で食い切らねばならんとか、ふざけた事を言いやがって……。」


あの超絶甘党のシュラならば、この程度の量のスイートポテトは軽く平らげるだろう。
しかも、顔色一つ変えずに。
ミロに、それが出来るとは到底思えない。
シュラは、このチャレンジが確実に失敗するだろうと見越して、『全部を食べ切ればデート』とという、彼からすれば破格の条件にすら、何のケチもつけなかったと見える。


「それで、そのように躍起になって食べているという訳か。」
「飛鳥とのデートが掛かってるからな。絶対に食べ切ってみせ……、ゴホッ! ゴホゴホッ!」
「だからと言って、あまり無理をするとロクな事にならないと思うぞ。」


正直、ミロがどんなに必死になろうと、この恋は成就しないだろう。
そもそも、シュラと飛鳥はお似合いのカップルだ。
飛鳥を好きだと公言しているアフロディーテにしたって、二人の間に無理に割って入るような事はしていない。
上手い具合に、シュラが不在の折りにフォローしたりと、自分の立ち位置を理解し、それを確立している。
まぁ、ミロに見習えと言っても、聞かないのだろうが……。


「待ってろ、デート! ゴホッ! ゴホゴホッ!」


スイートポテトを喉に詰まらせ、盛大に噎せるミロは、所詮、普通のスイーツ好き。
常識を越えたスイーツオタクの飛鳥と、常識を軽く凌駕した甘党のシュラ、そんなカップルに割って入れる隙など、端から存在しないのだと、何故、気付かないのか。
私は呆れの溜息を漏らしつつ、もう一つだけ、小さなスイートポテトを摘んだのだった。



秋の味覚は仄甘く、それでいて手厳しい



(よし、食べ切っ……、う……。気持ち悪っ……。)
(それだけ食べれば当然だろう。)



‐end‐





横恋慕ミロと呆れる和菓子の巻。
この時期の夢主さんは、芋・栗・南瓜という男性陣の苦手な喉詰まりスイーツ攻撃を無意識で行うため、かなり危険度は高めです(苦笑)
ただし、山羊さまには、この攻撃は全く効きません、全て美味しく平らげます。
恐ろしや、甘党山羊座w

2015.11.22



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