「スケベな笑みだな。草食山羊のクセに色ボケしちゃってさ。昨夜は、どれだけ飛鳥に無理を強いたんだい?」
「…………。」


言われて思い出す。
確かに、昨夜は情熱的な時間を、たっぷりと過ごした。
十日振りの帰宅だったのだ。
愛しい女を腕に抱けば、そりゃあ我慢なんて出来る訳がないだろう。


「相変わらず自己中だね。飛鳥だって仕事があるんだから、そこそこで終わらせて上げれば良いのに。どうせキミは執拗に、何度も覆い被さったんだろう、このエロ山羊が。」
「好きなだけ言えば良い。負け犬の遠吠えにしか聞こえんぞ。」
「兎に角、もう少し飛鳥の身体を労って上げなよ。」


もう一粒、塩チョコキャラメルを摘んで口に放り込んでから、再び飛鳥へと近付いた。
こんな床の上で寝ていては、それこそ身体が痛くなってしまうだろうに。
それすらも気にならない程に疲れ果てているのか、グッスリ眠っていて、起きる気配はない。


「……ん、シュラ。」
「何だ、飛鳥?」
「返事しても無駄だよ。寝言さ。さっきから何度もキミの名を呼んでる。」


一体、何の夢を見ているんだか。
眉を寄せて、少しだけ苦しそうな表情。
気になって、その頬をプニプニと突っ付いてみた。
先程は止められたが、今度は何も言わずに笑顔で眺めているアフロディーテ。
頬に違和感を覚えても、飛鳥は目覚めそうにない。


「キミの名前を呼んでいる時は、ほぼうなされているよ。どれだけ飛鳥にプレッシャーを掛けているんだい?」
「そんなもの掛ける訳がなかろう。俺は飛鳥の全てに満足している。」
「その割には、飛鳥に対して優しくないよね、キミ。」


そんな事はないと言い切りたかったが、心当たりが有り過ぎて言い返す事も出来ずに、グッと押し黙る自分。
確かに、二人きりの時以外は、飛鳥を冷たく突き放してしまう。
それもこれも、他人が俺達に向ける視線に耐えられない自分が悪いのだが。


申し訳ない気持ちを抱きながら、眠る飛鳥の頭をゆっくりと撫でた。
それが心地良かったのか、眠りながらも俺の手に頬をスリスリと擦り付けてくる。
本当に猫だな、この仕草、この反応。
挙げ句に、床に座り込んだ俺の腿にズルズルと這い上がってきて、そのまま腿を枕に眠ってしまった。


「飛鳥は余程、山羊の腿枕が好きなんだね。この間も、キミの膝枕で寝ていただろう。」
「こんな硬い枕、寝心地悪いだろうに。」
「自分で言うかい、それを。」
「ん……、シュラ……。」


再び、飛鳥の唇から寝言が漏れる。
しかも、また俺の名前。
今度こそ寝言の続きを聞き取ろうと、その愛らしい唇に耳を寄せた刹那、途切れ途切れの言葉が零れて聞こえてきた。


「シュ……、ラ。こんなに……、おっきな、タワーパンケーキ……。一人で……、全部……、食べちゃ、駄目だよ……。」
「…………。」
「なる程。キミが甘いものを摂り過ぎるのを心配して、うなされているという訳か。キミの事だ。飛鳥の夢の中でも、ハチミツやら、チョコレートシロップやら、生クリームやらをガッポリ掛けて食べているんだろうね。」


飛鳥を悩ますもの、それは俺の糖分摂取量。
だが、それもこれも、お前が作るスイーツが美味過ぎるからいけないんだ。
彼女と別れない限りは、俺の甘いもの好きは一向に減速しないだろうから。



甘く可愛い俺のニャンコ



(キミさ。飛鳥を安心させるために、一度、人間ドックにでも行ってきたら?)
(そんな必要はない。)
(シュラ……、それ以上は、血糖値が……。ムニャ……。)
(ほら。これ以上、心配掛けるのは良くないよ。)



‐end‐





日溜まりでお昼寝してる時に、山羊さまにツンツン突っ付かれたいという願望の現れですw
でも、山羊さまの膝枕は、硬くて寝心地悪そうなんですけどね(苦笑)

2015.04.19



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