***



「……オイ、飛鳥。なンだ、この超絶味気ねぇオバハンみてぇな下着は?」
「わっ?! わわっ?! な、何でデスさんが私の下着をっ?!」
「トイレ借りたら、中にオバハンパンツがゴッソリ干してあったが?」
「し、しまった……。雨で干す場所が足りなくなって、ついトイレに……。」
「で、オマエは、こンなヨロシクねぇ下着で、毎晩、シュラを誘ってンのか?」
「さ、誘ってなんか……。」
「じゃ、何か? マッパで待機してンのか、オマエは?」
「そ、そういう訳ではないですけど……。」
「つー事は、シュラはオマエと暮らすようになってから、ずーーーーっと、この色気もへったくれもねぇ下着を引っ剥がしてるって事か。可哀想にな、同情するわ。」
「な、何が可哀想なんですか?」
「そりゃ、オマエ。男たるもの、好きな女のセクシーな下着姿に興奮すンのは当然だろ。女に生まれたからには、男を喜ばせる努力は惜しンじゃいけねぇ。じゃねぇと、愛想尽かされて、ポイされかねねぇからなぁ。」
「ポイって……。追い出されるって事ですか?」
「そうだなぁ。アイツは、人前じゃ手を握るどころか、横を歩く事すら拒む男だぞ。なンの餌もなく、楽しみもなく放置されたンじゃ、そのうち本気で捨てられンじゃね? オマエ、タダでさえ貧相な身体してンだからよ。」
「す、スタイルの事は放っておいてください。日本人だから仕方ないんです……。」
「なら、多少の努力は見せねぇと。愛想尽かされる前に。」
「ど、努力? どんな?」
「シュラは見掛けによらず甘いモノ好きだからな。下着も可愛いヤツを好むンだろうぜ。ま、一応、セクシーなのも用意してやるか。その絶壁で着こなせるかは怪しいが。」
「絶壁じゃないですから。多少はありますから。」
「ンじゃ、サイズ教えろ。俺が色々と見繕って買ってきてやるよ。」
「えっ?! で、デスさんが買うんですか?!」
「おう。この俺がワザワザ足を運んで、厳選して買ってきてやるンだから、飛鳥は絶対に、明日からソレを着けて過ごせよ。分かったな。」
「そ、それは、その……。」
「分かったな!」
「ひっ?! は、はいぃっ!」
「そうそう、オマエは俺の言う通りにしときゃイイのさ。ま、シュラも大喜びすンだろうし、イイ事尽くめだろうぜ。」
「…………。」



***



と、まぁ、そんな事があったらしい。
俺の大事な飛鳥を脅すような真似をするとは、デスマスクの奴め。
今直ぐ首根っこを引っ掴まえて、怒鳴り散らしたい気持ちもあるが、うん、今回ばかりは「グッジョブ!」と言ってやりたい気もあるのは確かだ。
飛鳥の味気ない下着に限りなく落胆し、既に諦めモードに突入していたのは、明らかなる事実だからな。


「全く、お前は……。」
「そんな呆れた溜息吐かないでよ。」
「呆れもする。そんな下着如きで。服に隠れて見えていないというのに。」
「だから、見られる前に、脱いでしまおうと思ったのに、シュラが……。」


なる程、俺は絶妙なタイミングで突入したという訳か。
この機を逃していたら、この珍しい下着姿を拝めなかったのだから、自分の運に大いに感謝しよう。


「俺のために買った下着を、俺が見る前に脱いでどうする?」
「だ、だって、今更、こんな可愛い下着、恥ずかしいもの……。」


消え入りそうに小さな声で俯く飛鳥。
あぁ、これだから飛鳥は……。
出逢ったあの日、俺の心を撃ち抜いたのは、彼女の作ったザッハトルテの衝撃的な美味さではなく、彼女自身のこの愛らしさだった。
それを沸々と思い出すと同時に、身体の奥も比例するように滾ってくる。


「わっ?! や、シュラッ?! ガウン、返して!」
「断る。今から俺は、絶品の甘い菓子を味わうのだからな。」
「あの……、私、まだシャワー浴びてないんですけど……。汗だくで作業したから汗臭いかも……。」
「俺だって、修練で汗だくになっている。今更、互いの汗の臭いを気にするような仲でもないだろう。」
「ほ、本気なのっ?!」


やや抵抗をみせる飛鳥をベッドに組み敷き、口元に笑みを浮かべながら圧し掛かる。
デスマスクが用意した舞台というのが気に食わないが、そこのところは忘れておいてやろう。
これから最高の甘味を味わえるのだから。



キャンディーみたいな甘い下着の誘惑



(お、他にも、まだあるのか? これは随分とセクシーだな。)
(わ、駄目! シュラは見ちゃ駄目!)
(何故だ? 俺が見ないと意味ないだろう。)
(だって、シュラ! 暴走するんだもの!)



‐end‐





デスさんの機転により、山羊さまが暴走するの巻。
もしくは、世界一美味しいスイーツを、たっぷり堪能するの巻。
甘い物が大好きな我が家の山羊さまですが、彼の一番の好物は夢主さんだったりして(苦笑)

2015.01.19



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