Sweet Candy



「……随分と可愛らしい下着だな、飛鳥。」
「っ?! シュラッ?!」


ガチャリと寝室のドアを開けると、そこで着替えの真っ最中、下着姿の飛鳥がいた。
俺が突然、入ってきた事で、慌ててガウンを引っ被り、自身の身体、というよりも、下着姿を隠そうとする飛鳥。
今更、俺に身体を見られるのが恥ずかしいなどと、そんな事はないと思う。
つまりは、余程、俺に『下着』を見られたくなかったのだ。


「し、シュラ……、あの、シャワー浴びてたんじゃなかったのかな?」
「お前が朝から、ずっと挙動不審だったから、シャワーを浴びに行く振りをして、戻ってきた。」
「きょ、挙動不審……、だった?」
「あぁ、明らかにな。」


朝の朝食の頃から、何やらソワソワしていた飛鳥だが、俺が執務を終えて帰宅しても、まだ変わらずソワソワしていた。
一体、何をそんなに挙動不審になっているのかと訝しみ、俺の姿が消え、飛鳥が安心して気を抜いた時を狙って突入してみたところ、この下着姿だ。
正直、予想外過ぎて、突入された彼女だけでなく、突入をした俺もまた驚いてしまった。


飛鳥は普段、少しの飾りもない味気ない下着を着けている。
というのも、パティシエの仕事は体力勝負。
力も使うし、動き回りもする。
真夏の暑い日に、火も扱う事もあれば、高温のオーブンと睨めっこになる事もある。
つまりは動き易く、汗だくになっても気にならない、そういう機能性の高い下着を必要としている。
恋人の俺を喜ばせようなどと思って、それなりに飾り気のある下着を着けるなんて事は、まるで念頭にない。
俺もそれを分かっているから、今はもう期待すらしていないのが現状だ。


それが今、飛鳥が慌ててガウンで隠した下着は、まるでキャンディーの包み紙のように華やかで可愛らしいものだった。
淡いグリーンに淡い黄色のストライプ、縁には白いレースが揺れて、素材はコットンだろうか。
いつもは白かベージュで、飾りの全くない下着しか着けない飛鳥が、自分で選ぶとは到底思えないような愛らしさ。
驚いたと同時に、少し目が眩んだ事は黙っておくべきか……。


「シュラがシャワーを浴びてる間に、こっそり脱いで、こっそりランドリーボックスの中に放り込んでおこうと思ってたのに……。」
「まさかとは思うが、今朝からずっとソワソワしっ放しだったのは、その下着を着けていたせいか?」
「そのまさかです、はい……。」


慣れない下着に落ち着かなかったのが、彼女の挙動不審の原因という訳か。
しかし、何故、そのように気にしながら、いつもとは違う下着など着けていたのか。
そもそも、それをどうしたのだろう?
飛鳥が自分で購入したとは、とても思えないのだが。


「それは……、その、デスさんが……。」
「デスマスク、だと?」


アイツが何故、飛鳥の下着に関係しているのだ?
強い疑問と、薄らと湧き上がる微かな怒りに、グッと眉間を顰める。
すると、またも慌てた様子で、彼女が語り出したのは、数日前の遣り取りの話。
俺がたまたま宮を開けている際に、デスマスクが顔を出した時の事だった。





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