petit four的休日の過ごし方



休日の午前中は、いつも同じような過ごし方をしている。
まだグッスリと眠る飛鳥を横目にベッドを抜け出し、早朝トレーニングに出る。
戻ってきた頃には、彼女がキッチンで朝食を作っているので、シャワーを浴び、サッパリとしてからダイニングに向かう。
普段の朝食は、パンやスープ、サラダだったり、時には日本食だったりもするのだが、休日の朝だけは特別に、俺の好物であるチュロスを揚げてくれる。
それをチョコレートドリンクに浸して食べる瞬間は、最高の至福だ。


その後は、提出予定の報告書の確認をしたり、今後の任務に関する資料を読んだりもするが、折角の休日だ。
それに使う時間は一時間、多くても二時間程度。
終われば、後は本気の休日モードでノンビリと過ごす。
宮内を漂う甘い匂いに誘われて、飛鳥が菓子を作っているキッチンへ。
部屋の端には俺専用のスツールが置いてあり、そこに腰掛けて本や雑誌を眺めて時間を潰す。
というのは『振り』だけで、実際は、本を読んでいる振りをして、キッチン中をアチコチと動き回って、せっせとスイーツを作っている飛鳥の姿を眺めているのだ。
額に薄らと汗を掻きつつ一生懸命に菓子を作っている飛鳥を、ただ眺めているだけの時間が、不思議と楽しくて仕方ない。


「何をニヤニヤしている? 気味が悪い。」
「っ?! あ、アフロディーテか。いつの間に。」
「私が磨羯宮に入って来た事はおろか、背後に近付いても尚、気が付かないとは。そんなにニヤけた顔で飛鳥を凝視して、一体、何を妄想してたんだい? このエロ山羊が。」


休日だからと気を抜き過ぎたな。
うっかり飛鳥に見入ってしまい、アフロディーテの気配に気が付けなかった。
それもこれも、働き蟻の如くちょこまかと動き回る飛鳥が、愛らし過ぎるのがいけないのだ。
しかし、それをコイツに批判される筋合いはない。


「俺が飛鳥を眺めて何を妄想しようが、問題あるまい。俺の女なんだからな。」
「そうか。では、気味悪くニヤニヤしながら、何を妄想していた?」
「妄想というより回想だな。昨夜の飛鳥の色っぽい声や姿を思い出して、今の姿に重ね合わせて見ていた。今夜を待ち遠しく思いながら。」
「ホンットにエロ山羊だな、キミは。何故、こんな最低最悪のムッツリスケベな彼女持ちがモテるのか、意味が分からない。」


フンと荒く鼻息を吐き、アフロディーテはジト目で俺を睨む。
こうして、飛鳥を眺める至福の時間を邪魔されるのも、いつもの休日だ。
今日はアフロディーテだったが、デスマスクの時もあれば、無神経に平然と入り込んでくるアイオロスや、ワザと邪魔しに現れるミロの時もある。
カミュが飛鳥に菓子の事を聞きに来る事もあれば、アイオリアが菓子を目当てに顔を出す事もある。
そう考えると、飛鳥が磨羯宮に住まうようになってからというもの、人の出入り、特に黄金聖闘士の出入りが多くなった。
以前は、悪友といえる二人以外とは、もっとアッサリとした付き合いだったように思うのだが。


「良い匂いだね。今日はアップルパイかい?」
「そうなの。でも、ただのアップルパイじゃつまらないから、サツマイモも一緒に煮て、スイートポテトアップルパイにしたのよ。ホクホクで甘くて美味しいの。もう直ぐ焼き上がるから、ディーテも持って帰ってね。」
「それは楽しみだ。何処ぞのムッツリ山羊だけに食べさせるのは勿体ないからね。私もシッカリ味わわせてもらうよ。」


いつもと変わらぬ休日。
甘く香ばしいスイーツの匂いに包まれて、聖戦以前には考えられなかったような平和な時間を、ぼんやりと噛み締めている。



ゆったりスイーツを味わえる日々



(お前は妄想するなよ、アフロディーテ。)
(……は?)
(飛鳥の痴態を妄想して良いのは俺だけだ。)
(ホンットにスケベで最低な男だな、キミは……。)



‐end‐





休日の山羊さま編です。
スイーツ作りに勤しむ夢主さんを眺めて、アレコレソレコレとニヤニヤ妄想するムッツリ男だと良いと思っております (苦笑)

2021.01.29



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