petit four的バスタイム



ザーザー、ザザー……。


たっぷりと湯を張った湯船にノンビリ浸かりながら、シャワーを浴びる飛鳥の後ろ姿を眺めていた。
各宮には古代ローマを思わせる立派な浴室が設えられていたが、それを有効活用しているのはサガくらいだ。
だが、たまにデスマスクやアフロディーテも湯に浸かる事があるようで、疲れが取れると勧められたが、俺には無用のもの、シャワーだけで十分と浴槽を使った事はなかったのだが。
飛鳥が移り住んできてからというもの、湯船に浸からないなんて考えられない、疲れが取れないからお湯に入りたいとゴネられ、こうして俺も入浴をするようになった。


が、これはこれで良かったと今では思う。
湯に浸かる行為は、予想以上に快適で、予想以上に疲労回復に効き目があった。
何より飛鳥と浴室の中でイチャつけるのが素晴らしい。
シャワーだけよりも、湯船があった方がイチャつき方のバリエーションが豊富になるからな。
俺は口元に薄くニヤリと笑みを浮かべ、華奢な飛鳥の頭の先から踵まで、その後ろ姿の裸身を見遣った。


「う〜ん……。」
「どうした?」


飛鳥の呻き声と共に漂ってきたのは石鹸の香り。
彼女はいつもフルーツ系のボディシャンプーを使っている。
多いのはオレンジやレモンの柑橘系だが、気分によってピーチやマンゴーなどの甘い香りのボディシャンプーを購入してくる事もあった。
が、今日はフルーツ独特の華やかな香りはしない。
木々や草木を思わせる植物の香り、何処か懐かしさすら感じる。
飛鳥の手元を見れば、深いグリーン色の液体がボトルの中で揺れている。
彼女と暮らすようになる前に使っていた石鹸、聖域からの供給品の石鹸と似ているな、この匂い。
あれは確かオリーブで作られた石鹸だった……。


「そうそう、それそれ。」
「……それ?」
「オリーブ。これもオリーブのボディシャンプーなの。懐かしい……。」


この香りに俺が懐かしいと感じるのは分かるが、飛鳥までそう思うのは何故なのか?
俺はザバリと大量の湯を纏いながら浴槽から出ると、彼女の手からボディシャンプーのボトルを奪った。
このマーク……、いつもと同じメーカのものだ。
フルーツや花の香りのものばかり扱っているのかと思っていたが、こういうスタンダードでサッパリした香りのものもあるんだな。


「昔、コレを使っていたの。オリーブは乾燥肌用で、いつものフルーツ系は普通肌用ね。最近、お肌がカサカサしてきたから、また試してみようと思って。」
「だったら、ボディソープを買うより、アフロディーテにローズオイルでも貰った方が良かったんじゃないか。」


それ以前に、飛鳥の肌は全くカサついてなどいないがな。
いつ触っても滑らかで、スベスベしてるじゃないか。


「そんな事はないよ、肘とか膝とかカサカサなの。シュラは良いよね。いつも筋肉がツヤツヤ、テカテカで。」
「それの方が、そんな事ない。テカテカなのは、アイオロスとアイオリアだろう。アイツ等は筋肉がテカる何かを塗ってるらしい。」
「えっ?! そうなの?!」


目を見開き、口も開いて俺を見上げる飛鳥からバススポンジを奪い、それにボディシャンプーをワンプッシュ、たっぷりと泡立てる。
まずは自分の腕、首、胸を、それから、飛鳥の背中をそのスポンジでゴシゴシと洗いながら、「あの兄弟はボディビル用のオイル塗ってるんだ。」と適当な嘘を吐いてみたりした。
そんなアホらしい冗談にも付き合ってくれるのが、飛鳥の可愛いところだな。
クスクスと笑う彼女の背中を念入りに擦りつつ、俺は泡の付いていない無防備な首筋にキスを落とした。



ほっこりお風呂で休息を



(……わわっ?! 何処を触ってるのよ、シュラ?!)
(何処って、尻だが。どのくらいカサついてるのか確認だ。)
(それ、確認いらない! それに、お尻じゃなくても良いでしょ!)



‐end‐





本日もムッツリ全開な我が家の山羊さまですw
お風呂でイチャつくために湯を張るとか、どんだけムッツリですかw

2018.10.12



- 2/21 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -