「目付きが悪いは余計だ。」
「どーせ、ムッツリ山羊の事だ。告白なンざ、すっ飛ばして、いきなり押し倒したンだろ。コイツに告白されるだなンて甘い夢見ンのが、そもそもの間違いってモンだわ。」
「失礼な。飛鳥に告白なら、ちゃんとしたぞ。直後に押し倒しもしたがな。」
「結局、押し倒してンじゃねぇか、エロ山羊。威張って言う事じゃねぇぞ。」


この際、シュラのスケベ度合いは横の方に置いておくとして。
そんなに羨ましいなら、シュラに愛の告白のお強請りでもすれば良いのに。
人前では無理としても、二人きりの時ならば、朴念仁のシュラでも、それなりに甘い言葉の一つや二つは囁いてくれるんじゃないのかい?
だが、飛鳥は首を横に振り、そうではないのだと言い張った。


「告白される方じゃなくて、告白する方の話よ。女の子からの告白っていうのも良いなぁ。熱烈な告白を受けるのも魅力的だけど、女の子が一生懸命に考えて、必死に告白するもの素敵じゃない?」
「そうかぁ?」
「そうなの。だから、ドキドキするし、ビクビクするし、胸がキュッとなるし、甘酸っぱいのよ。」


目をキラキラさせて語る飛鳥は、どうやら告白した女官の子に感情移入して、アレコレと空想の世界に浸っているようだ。
今まで、そういう経験はなかったのかと彼女に問えば、全くないとの答え。
人に告白した事もなければ、告白をされたのもシュラが初めてだったとか。
シュラ以前に付き合った数人の相手は皆、何となく付き合い始めて、いつの間にか終わってしまっていたそうだ。
彼氏を作る事より、菓子を作る事に情熱を傾けていたというなら、見事なまでに飛鳥らしい。
だが、そんな彼女でも、女の子らしい恋のトキメキに憧れは持っていたのだ。


「告白するのは凄くドキドキする。恥ずかしいし、照れ臭いし、心臓もバクバクするし、口から飛び出しそう。しかも、告白して当たって砕けちゃうかもしれない。そこで全部が終わってしまうのは、とっても怖い。でも、相手の事が好きで好きで、好きだから苦しくて、想いを抑え込んでるのが難しくなる。自分の気持ちを伝えずにはいられなくなって、砕けても良いから告白しようって思うの。こういうのって女の子だけが持つ気持ちなのかなぁ……。これぞ女子の甘酸っぱい青春?」
「女の考えってのは、ワケ分かンねぇなぁ。まどろっこしいっつーか。」
「ま、そういうトキメキを求めるのは、女の子特有のものだろうね。」


ケーキを黙々と食べていたシュラも、デスマスクと私の意見にコクコクと頷いた。
どちらかというと、男は欲求と衝動に突き動かされて進む。
告白をするという行為そのものに、トキメキを求めるような感覚は、多分、男にはない。


「甘酸っぱい恋愛が好きなのは、女の子だけって事ね。あ、だから女の子は苺が好きなのかな? 甘くて酸っぱくてキュッとなるから。」
「それとこれとは違ぇだろ。兎に角、ドキドキ告白が体験してぇってンなら、どこぞのエロ山羊にでもコクってみりゃイイんじゃね?」
「それは駄目。」
「どうしてだい、飛鳥?」
「答えの分かっている告白じゃ、ドキドキなんてしないでしょ。」


確かに、そうだ。
シュラは空気を読んで焦らしてみたり、迷ってる振りをしてみたりなんて、絶対にしないだろうしね。
寧ろ、返事より先に、ベッドに押し倒しそうだ。


「俺はそこまで野獣ではない。まぁ、返事の後に、ベッドに直行するのは間違ってないがな。」
「結局、押し倒すンじゃねぇか。この万年発情山羊が。」
「好きな女から告白されて、発情しない方がおかしいだろう。」


開き直ったシュラが、恥ずかしげもなくキッパリと言い切った横で、飛鳥は未だに「良いなぁ。」と呟き続けている。
叶わないと分かっているからこそ、憧れは強くなる。
彼女が『告白されてみたい』というのなら、私が何度でも色んなパターンで告白して上げるんだけどね。
飛鳥が求めているのが『告白してみたい』という事ならば、私に出来る事は何一つない。


目の前には、いつの間にか告白話から脱線して、いつ・どのタイミングで押し倒すかを熱く議論しているシュラとデスマスクがいる。
噂話を下世話というのなら、キミ達は下品だよ、下品。
私は溜息を一つフーッと吐くと、まだ手を付けられていなかったデスマスクの苺クラフティを横から奪い、自分の口の中へと放り込んだ。
広がるのは苺の酸味と、生地の甘さ。
そうか、女の子が求めているのは、この甘酸っぱさなのか……。



告白、イコール、苺味



(……アイオリアッ。昨日の子とは付き合う事にしたのかい?)
(な、何の話だ、それはっ?)
(トボけンなよ。知ってンだぜ。可愛い女官にコクられたってなぁ。)
(そ、そそ、それはっ……!)



‐end‐





ニャーくんの出した結論は、待て次回!(笑)
ここぞとばかりに後輩を弄り倒すニヤリ笑いの悪い先輩三人が、目に浮かびますわねw

2018.11.26



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