petit four的雷雨の日



窓の外はバケツを引っ繰り返したような大雨。
ドドドドドッという雨音とは思えねぇ爆音に、周囲の音が全て飲み込まれて掻き消されていく。
ふ〜、危なかったな。
教皇宮から巨蟹宮へと帰る途中、急に空が暗くなったと思ったら、磨羯宮に入った途端に、この豪雨。
少しでもノンビリ歩いてたら、今頃はびしょ濡れになってたかもしンねぇ。


「暫くは止みそうにねぇか……。って、ンだよ? その嫌そうな顔は?」
「嫌そうなではなく、嫌なんだ、実際。折角、飛鳥と二人きりの休日を満喫していたというのに、とんだ邪魔が入った。」
「俺だって邪魔したくて来たワケじゃねぇよ。つか、普通、思ってても言うか、ソレ?」


ムッスリと不機嫌を貼り付けた顔で俺を睨み付けるシュラ。
そう怒るなよ。
こンな酷ぇ雨なンだから、しゃあねぇだろが。
いつもの言い合い・罵り合いを続けている間に、今度は窓の外がピカッと光った。
それに続いて、ドッカーン! と地を割るような轟音が響く。
ビリビリと伝わってくる振動は、落雷によるものだ。


「ひえぇぇぇぇっ! シュラーー!!」
「なンだよ、飛鳥? 色気のねぇ悲鳴上げて。」
「だ、だだだ、だって! あの雷! ひえぇっ!」


もっとこう、「きゃあ!」とか女っぽい可愛らしい悲鳴を上げられねぇモンかね。
そうこう言っている間にも、また一つピカリと光り、ドガン! と何処かに雷が落ちた。
続けざまに上がる「ひええっ!」というクソ可愛くねぇ悲鳴。
その声の主・飛鳥は涙目になりながら、トテトテとシュラに向かっていく。
まるで縋るように両手をシュラへと突き出して。


「シュラぁ〜、う、うううっ……。」
「大丈夫か、飛鳥? そんなに雷が嫌いだったのか?」
「怖い〜! 雷、怖い〜!」


ヨロヨロと近付いてきた飛鳥を受け止め、シュラはシッカリと腕に抱き締めた。
オイオイ、普段から人前では手は繋がねぇ、隣を歩くのも嫌がって少し前を歩く、腕を組むのなンざ以ての外な男が、俺が目の前に居ながら、随分と熱い抱擁を見せ付けてくれンじゃねぇか。


「貴様に見られているのは不本意だが、こんなにも怖がっている飛鳥を放ってはおけないだろう。」
「そンだけ男らしい事が言えンだったら、普段から手ぇくらい繋いでやれよ。」
「それとこれとは話が違う。」


違わねぇし、意味分かンねぇし。
目の前には、シュラの胴体にガッシリとしがみ付き、胸に顔を埋めて震える飛鳥と、その頭を撫でながらシッカリと抱き返すシュラという、バカップルにしか見えねぇ二人の姿。
なぁ、教えてくれよ。
手繋ぎイチャイチャと、今のそのイチャイチャっぷりと、何がどう違うってンだ?


「うう〜、怖い〜。雷、いや〜。うう〜……。」
「大丈夫だ。この程度なら直ぐに止む。それよりデスマスク。貴様、いつまでココに居座る気だ? 早く巨蟹宮に帰れ。」
「この滝雨と、この雷の中、追い出そうってのか? オマエ、どンだけ鬼だよ。」


どうやら飛鳥が雷にビビッて縋り付いてくるのを良いコトに、昼間からベッドに押し倒す気満々らしい、このエロ山羊は。
だったら尚更、雨が止むまでは出て行かねぇぞ。
テメェばかりイイ思いをするのは、何が何でも食い止めてやっからな。



雷雨の中のお邪魔虫



(傘なら貸すぞ。だから、早く帰れ。)
(傘なンざ意味ねぇだろ、こンな豪雨じゃ。)
(ひえぇぇぇぇっ! また光った〜!)



‐end‐





先日の酷い雷の際に思い付いたお話です。
ポイントは夢主さんの可愛くない悲鳴ですw
ちなみに私は雷は怖くないどころか、ウキウキして眺めちゃう派です(聞いてないよ)

2018.07.03



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