(本当に約束を守った? 嘘じゃないか、飛鳥に聞くけど?)
(勝手にしろ。)


秋の気配が深まる季節でも、春風のように暖かな笑顔でニコニコと微笑む飛鳥。
あぁ、彼女は本当に可愛らしい。
シュラの恋人でさえなかったら……。
何度、そう思った事だろう。


「飛鳥、デートは楽しかったかい?」
「勿論よ。」
「シュラは、ちゃんと手を握っててくれた? 飛鳥を一人にはしなかった?」
「それは、その……。」


言い澱んで、チラリと視線を向けた先には、仏頂面で頬杖を付くシュラがいる。
飛鳥の視線を感じて、一瞬だけ視線を合わせたシュラは、渋々といった様子で小さく頷いてみせた。


「実はね。最初は手を繋いで歩いていたんだけど、途中で怖いお兄さん達に声を掛けられて……。」
「怖いお兄さん?」
「そう。シュラと私の距離が少しだけ開いていたから、多分、手を繋いでるのが見えなかったんだと思う。で、声を掛けられた瞬間、シュラが、その、キレちゃって。」
「あ〜……。」


それは、そうだろう。
シュラは最初、私達、黄金聖闘士にさえも、飛鳥と会わせるのを嫌がった程だ。
しかも、デスマスクに至っては、隠しに隠して、数ヶ月間もの間、会わせないようにしていた。
それが街のチンピラ紛いの男達に声を掛けられたとなれば、烈火の如く怒り狂うのは目に見えている。


「で、シュラの迫力にお兄さん方が逃げ出した後は……、それはもう、腰やら肩やらに腕を回して、その……。」
「抱き締めんばかりの状態だった、と。」
「はい……、恥ずかしかったデス……。」
「全く、キミは……。両極端過ぎるだろう。」
「煩い、黙れ。」


もう少し、程良いスキンシップが出来ないものなのか?
ラテン男でありながら、侍みたいに硬派な男。
飛鳥も厄介な相手を好きになってしまったものだ。


「あぁ、そうだ、飛鳥。さっきのマカロン。もう一つ別に作っていただろう。あれ、シュラの為のじゃないのかな? 折角だから、今、食べてもらえば良い。」
「あ、そうだった!」


嬉々として後ろに置いてあった小皿を、シュラの前へと差し出す飛鳥。
青い薔薇模様の小皿の上には、彼女がシュラのために作ったマカロンが三つ。
しかも、普通の円型ではなく、ハート型をしたマカロンが盛り付けられていた。


「こ、れはっ……?!」
「ふふっ。可愛くて、美味しそうで、しかも、愛がたっぷり込められてる飛鳥のマカロンだ。さ、早く食べなよ、シュラ。」
「う、ぐ……。」


流石に、私の視線が気になるのだろう。
真っ赤に顔を染めたシュラが、口をパクパクさせながら、目の前に置かれたハートのマカロンに、震える指を伸ばす。
そんなシュラを邪気のない笑顔で見つめる飛鳥と、心の中でほくそ笑みながら眺める私。
そんな中、シュラの震える手は、スローモーションの如く、ゆっくりと、ゆっくりと、マカロンへと近付いていった。



愛をくれなきゃ、悪戯するぞ!



これで私が居なければ、飛鳥の肩を抱きながら喜んで食べるのだろう。
しかも、マカロンを味わった、その口で、飛鳥の柔らかな唇までも味わったりしてね。
だが、絶対に、それを食べ終わるまでは、ココから帰らないからな。
これは、愛しい彼女に苦労を掛けているシュラ、キミへの罰さ。



‐end‐





山羊さまへの羞恥プレイ+拷問見せしめの刑を科す、真っ黒魚さまの巻www
報われない恋の憂さ晴らしを、そもそもの原因である山羊さまで発散しているらしいです(苦笑)

2013.10.27



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