petit four的肩揉みサービス



今日の飛鳥は、朝からグルグルと腕を回したり、首をコキコキと動かしたり、肩を揉んだり、何やら忙しない。
どうしたのだ、と問えば、曇った表情のまま、俺の事を見上げて溜息を吐く。


「首から肩にかけて、すっごく怠いの。このまま放っておいたら頭痛になりそうで。」
「寝違いじゃないのか? 昨日は凄い格好で寝ていた。」
「凄い格好って……。え? 私、そんなに寝相が悪いの?」
「時々な。」


昨夜は、まず仰向けで右手を上に伸ばしたままだった、まるで俺が聖剣を構える仕草のように。
そして、首は左向きに曲がった状態。
正直、そんな体勢じゃ深く眠れないだろうにと思ったのだが、飛鳥はスカースカーと寝息を立てていたのだから不思議だ。
呼吸が苦しくなったりしないのだろうか?


「そんな事を聞かれても。私自身はグッスリ眠っていて、どんな体勢になっているかなんて知らないもの。」
「確かに、それはそうだな。」
「シュラは……、いつも寝相は良いわよね。」


いつでも何処でも寝られるように訓練をしているからだろう。
必要とあれば座り寝も、時には立ったまま仮眠を取らねばならぬ場合もある。
ゴロゴロと転がってしまうようでは、聖闘士としての任務は務まらないのだ。


「……肩、揉んでやろうか?」
「はい?」
「凝っているのだろう? 揉めば解れるかもしれん。……って、何故に後退る?」
「だって、ねぇ……。」


俺が飛鳥の肩へ向けて腕を伸ばすと、避けるように後ろへ距離を取る。
引き攣った笑いを浮かべ、どうやら遠慮したいといった素振り。
何故だ?
頭痛が起きてからでは遅いのだぞ?


「シュラの加減を知らない手で肩揉みなんてされたら、頭痛よりも前に、肩の骨が砕けそうだなぁと思って。」
「俺を何だと思っている、飛鳥? そのくらいの加減なら、目を瞑ってでも出来る。」
「え〜、本当に?」


疑いの眼差し。
細めた目で、俺を見上げる飛鳥。
確かに、デスマスクのように繊細な気遣いは出来んが、肩揉みに丁度良い程度の力加減くらいは分かる。
それが出来ないなら、卵の殻割りだって握り潰して上手くいかなくなってしまうだろ。


「……じゃあ、ちょっとだけお試し? してみようか?」
「そこに座れ。あぁ、少し位置が低いな。」


一人掛けのソファーに座り、ゴソゴソと服の首元から手を入れて下着の肩紐を擦り下げる飛鳥。
だが、背後に立った俺には、飛鳥の肩の位置が少し低過ぎた。
手近なクッションを尻の下に敷き、丁度良い高さに調節してもらう。


「はじめるぞ。」
「お手柔らかに〜。」


――グリグリ、ガッシガシ。


これは相当に凝っているな。
細くて、軽く力を入れただけでもポキッといってしまいそうな飛鳥の華奢な肩。
だが、少し触れただけでもガチガチに固まっているのが分かって、ゆっくりと念を入れて丁寧に揉み解していく。


「どうだ? 俺のマッサージも悪くはないだろう?」
「うん……、気持ち良い……。もうちょっとだけ揉んでくれる?」
「追加料金は高いぞ。」
「え〜、お金取るの?」


金とは限らん。
飛鳥に要求するなら、やはり美味いスイーツだろう。
今日の気分は、そうだな……。


「リーフパイだ。リーフパイが食いたい。」
「パイ? そういう御要望なら喜んで応えるけれど。でも、また肩凝っちゃいそう……。」


パイ生地を練るのは結構な力仕事だ。
折角、解れて良くなった肩の具合が、また逆戻りという事も有り得る。


「なら、生地を練るのは俺がやろう。」
「え、良いの?」
「力を使うのは男の仕事だ。」
「おおっ。シュラが何やら格好良い事を言っているわ。」


肩を揉まれながらクスクスと笑う飛鳥。
その笑いに揺れて震える肩は、何とも揉み難い。
ペチリと軽く頭の後ろを小突くと、クルリと振り返った飛鳥がペロッと舌を出してみせた。



彼女に尽くすのも悪くない、たまにはな



(リーフパイにかける砂糖は多めで頼む。)
(シュ〜ラ〜。糖分の取り過ぎだって言っているでしょ〜。)



‐end‐





山羊さまに肩揉みして欲しい願望の現れw
未だ偏頭痛が止まらなくて辛い時の現実逃避の賜物です(苦笑)

2017.05.14



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