宝瓶宮に向かって十二宮の階段を上がっていく。
が、その手前に磨羯宮がある。
噂の飛鳥の住まう宮だ。
どうせなら、恋人であるシュラに聞くのが一番良く分かるのではないか?
そう思って寄ってみると、当の飛鳥は留守にしており、シュラだけがノンビリと過ごしていた。
こちらも飛鳥の作ったであろうクッキーを、文字通りボリボリと貪っていた。
皆、甘い物を摂取し過ぎじゃないのか?
凄い勢いでクッキーの山が減っているのだが……。


「どうした、アイオリア?」
「いや、ちょっとな。キモノの色気について聞きに来たんだが……。」
「着物?」


ピクリと僅かに動いた表情を見て、これは食い付いたと思い、ミロの力説していた色気について、シュラに投げ掛けてみた。
ウンウンと納得したように頷くシュラ。
どうやら和服の色気については、ミロと同意見のようだ。


「まぁ、和服は女のみならず、男の色気も引き出すからな。」
「男の? そうなのか?」
「あぁ。飛鳥が頻繁に俺に和服を着せたがるのだが、理由が『シュラは和服を着ると色気が増して格好良さも増す』のだそうだ。俺もまぁ、悪い気はしない。」


ノロケか、それは?
顔は変わらず強面で無表情だが、至極、満足そうに鼻を鳴らし、またクッキーを貪るシュラ。
何故に、このような男に恋人がいて、他の黄金聖闘士にはいないのか。
ミロが嘆く気持ちも大いに分かる気がする、この態度を見ていると。


しかし、着物というのは男女関係なく色気を増幅させるものなのか。
悶々と考えながら磨羯宮を出て、宝瓶宮に向かう。
途中、上から下りてきたデスマスクとアフロディーテに出くわした。
丁度良い、彼等にも話を聞いてみるとしよう。
シュラや飛鳥と一緒に過ごす事も多い二人だからな。


「……う〜ん。確かに露出は減る、というか、ほぼ無くなるけれど、色気は格段に増すよね。何と言えば良いのかな。洋服の時には現れないような奥ゆかしさというか、そういうものが醸し出されるんだよ。」
「色気は露出じゃねぇよ。仕草と雰囲気だ。」


そう言われても良く分からんのだが、それは男にも当てはまるのか?
シュラも色気は増すと、自信ありげに言い放っていたが。


「あ〜、男はまた別モンだな。ありゃ、着てるだけで誰でも色気が出るようになってる。」
「前に、日本のお祭りに行ったんだ。飛鳥と私達三人、浴衣を着てね。」
「逆ナンされ放題だったな。シュラに至っては、横に飛鳥がいるってのに、女が群がってヤバかったし。」


という事は、この俺でも着物を着れば色気が出るのか。
脳内で思い浮かべて見ても、どうにもハッキリしたイメージが湧かずに眉を顰める俺に、「多分、それなりになンじゃね?」とか「一度、お温泉に行って、浴衣でも着てみたら良いんじゃない?」などと適当に告げて、二人は磨羯宮の方向へ去っていった。
だが、益々、俺の頭の中のモヤモヤ具合は悪化してしまった。


「カミュは、どう思う?」
「いきなり現れて、いきなり何なのだ?」


宝瓶宮に着くなり、意見を求めてカミュに詰め寄ってしまった。
いかんいかん。
ついつい焦って、前のめりになってしまうクセが出てしまった。
いったん落ち着こう、コホンコホン。





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