射竦められる。
まさにその言葉がピッタリだと思える、そんなアイオロスの視線だった。
動けねぇ。
アイリーンは勿論、黄金聖闘士である俺ですらも……。


「ずっと気になってたんだけど……。隠し事してるよな、お前達。俺とリアに対して。」
「っ?!」
「ちっ、クソ……。」


俺の手をギュッと握り締めるアイリーンの手と指先に、痛い程の力が入る。
俺は睨み付けるように傍に立つアイオロスを見上げ、アイリーンは俺の胸の中に隠れるように、より一層、深く俯いた。
シュラは唇を噛んで、ジッと事の成り行きを見守っている。
ただ、アイオリアだけが、何が起きているのかさっぱり分からないという顔をして、俺達の顔を交互に見ていた。


「言えない? 言いたくない? デスマスクもシュラも、その事が話したくて、今夜、この場に俺とリアを呼んだんだろう? 違うのか?」


淡々と紡がれるアイオロスの声。
今、この状況でアイリーンの抱える真実を告白しても、本当に大丈夫なのか?
選択が間違っているんじゃないのか?
あまりの迫力に押され、伝える事を躊躇いたくもなってくる。


「…………。」


クソッ、ダメだっ!
何て言って切り出しゃイイのか、全然、分かんねぇ!
額を嫌な汗が伝う。
チラリと見遣れば、シュラの額にも同じような汗が滲んでいた。


「そう、か……。言わないんじゃない。『言えない』んだね?」


そう言ってアイオロスは、大きな身体を折り曲げて、その場に屈む。
そして、椅子に座るアイリーンと同じ高さに視線を合わせた。
アイオロスの鋭い視線を感じ取り、ビクッと体を震わせる彼女。


「多分、間違っていないと思うんだけど……。アイリーン、キミさ。俺達の血縁だったりする? 従姉妹とか、極近い親類辺りの……。」
「っ?!」
「なっ?!」
「兄さん?!」


核爆弾並みの破壊力を持ったその一言に、その場の全員が一瞬、息を止めた。
いや、止めたと言うより、呼吸を忘れたという方が当たっている。
俺も彼女もシュラも、アイオリアでさえも、呼吸を忘れて目を見開き、アイオロスを凝視した。


「違うかな?」
「あ……、あの……。」


コイツ、気付いてやがったのか……。
ったく、何て野郎だ。
ノホホンと暢気な顔して、いつもニコニコ笑ってるだけかと思いきや、コレか?!
つまり『聖域の英雄』、『最強の黄金聖闘士』の尊称は、ダテじゃなかったと。
ハハッ、俺はこんな化け物相手に、一発しでかしてやろうなんて無謀な事を考えてたってワケか……。


呆れと諦め、それが心の中で入り乱れて、全身の力が抜けていく思いだった。
どうしてか理由は分からねぇが、後から後から湧いてくる変な笑いが堪えられそうにない。


「ク……、ククク……。」
「デスマスク?」
「だってよぉ、もう笑うしかねぇだろ? こンな簡単に言い当てられちまうなンてな。俺が散々働かせてきた気苦労は何だったワケ? アレコレと考えてた時間、返して欲しいくれぇだ。」
「ふ〜ん、そうか。やっぱりそうだったんだな。」


笑い出した俺を、驚いた顔をして見ているシュラ。
一方のアイオロスは、納得がいったからか、それまで鋭かった視線が、フッと柔らかいものに戻る。
その刹那、部屋中に張り巡らされていた緊張の糸が、スッと消えてなくなった気がした。





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