「シュラ様。シュラ様っ。アイオリア様なら、もう行きましたよ。」
「…………。」
「シュラ様ったら……、あっ! や、ちょっと、シュラ様っ!」


アイオリア様が帰っていったというのに、シュラ様は未だ私のお腹に顔を埋めたまま。
そして、挑発のために私の身体に這わしていた手を引っ込めるどころか、更に遠慮なく腰から下を撫で回してくる。


「やだ、シュラ様! 何をどさくさ紛れに本気で触っているのですか?!」
「何をって、触り心地が良かったから、止められなくなっただけだ。」
「止められなくなったじゃなくて、早く手を離して――、きゃっ!」


お尻を擦る手を引き剥がそうと、シュラ様の手首を掴んだところで、グッと強い力が全身に加わった。
一体、何事かと呆然とする中、背中には僅かに反発してくる柔らかな感触。
真上には目と鼻の先、シュラ様の端正な顔がある。


――え、上?


良く良く見れば、肩を両手で押さえ付けられて、私はシュラ様によって、ソファーの上に組み敷かれていた。
私を見下ろす彼の目はギラギラとして、明らかに『そちら』のスイッチが入ってしまっているのだと一目で分かる。


「えっと、シュラ様……。あの、これは……。」
「もう夜も程良い時間だ。夫婦である俺達にとって、これからヤる事など、一つだろう?」
「え、いや、でも、私、ほら! こ、腰を痛めていますから……。」
「腰? そうか、ならば手加減くらいはしよう。」


いや、手加減じゃなくて!
そもそも、そういう行為自体、無理だと訴えているのです!
分かりますよね、普通!
分かりますよね、分かってください、お願いします!


「で、デスマスク様にも言われませんでしたか? 無理はさせないようにって。」
「あぁ、そうか。成る程、そういう事か。」
「えっ? 何を――、んんっ!」


力を抜くどころか、瞬きの間もなく落ちてきたのは、情熱的に濃厚な口付け。
不意打ちに仕掛けられたそれは、呼吸もままならない程の深さで貪ってくる。
本気も本気、これから何をするのかをハッキリと知らしめるキス。
未だ眠ったままの私の身体を揺さ振り、夜の気配の中に目覚めさせるキス。


「んっ……、ふっ……。」
「そんな顔を見せ付けられては、我慢なんて出来んな。」
「あっ……。」


私をこんな状態にしたのは、そもそもシュラ様だっていうのに。
いつもそう言って、自分が止まらなくなる原因を、私に責任転嫁するのだから。
深い口付けの余韻にフワフワとし始めた意識の中で、ぼんやりとそう思う。


「また、こんな色気のない下着を。」
「あ、やっ……。」


力を入れる事なく、楽に左右に押し広げられた女官服から覗く、真っ白な私の下着を見て、シュラ様が溜息を吐く。
着慣れていて動き慣れているからと、女官服を身に着け続けていた私だけれど、明日からは、もっと脱がし難い服を着よう。
首筋に熱い唇が触れて、ビクリと跳ね上がる身体を意志の力で抑え付けて、私はそんな事を思っていた。





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