暗闇の中、シュラ様がスッと動いた。
闇に慣れ始めた私の視界の中、細めて凝らした目が、腕を上げる彼の姿を捉える。
着ていたTシャツを脱いだのだろう、次いで、それを床に放り投げているのが映った。
あぁ、また床に脱ぎ捨てたままで、シュラ様ったら……。
なんて思っていたら、彼がハーフパンツに手を掛けたのが見えて、私は慌てて声を上げた。


「し、シュラ様っ?!」
「何だ、アンヌ?」


闇の中、上擦った私の声と、ヤケに落ち着いたシュラ様の声が響く。
私はベッドの上に身を起こし、動きを止めた彼の方を真っ直ぐに見た。


「ま、まさか、下着まで脱ぐつもり……、じゃないです、よね?」
「まさかも何も、俺はいつも全裸で寝ている。アンヌも知っているだろう。」
「し、知ってはいますが! せめて今夜は、下着だけでも身に着けてくださいませんか?」
「パンツなど履いたままでは、窮屈で良く眠れん。」


私のささやかな願いは、あっさりと却下された。
という事は、ですよ。
私は、またも全裸のシュラ様に抱き締められて眠らなきゃならないんですか?!


今は真っ暗で何も見えないから良いとして、いえ、色々と当たったり接したりするから本当は良くないんですけど、一先ず、それには目を瞑るとして。
朝になって明るくなれば、とてもとっても物凄く非常に危ないんじゃないですか?
仮にシュラ様の寝相が悪く、上掛けがズレたりして身体から外れていたら、それこそ大変な事になるんじゃないんですか?


「何故だ? 俺の裸なら、何度か見てるだろう。それに、今はもう恋人同士だ、問題ない。」
「わ、私的には問題ありますから!」
「そんな事、気にしなければ良い。何ならアンヌも脱ぐか?」
「脱ぎませんっ!」


私は彼に背を向けると、そのまま再びベッドに沈んだ。
ボスンという気持ち良さ気な息を吐いて、ベッドが軽く揺れる。
背後では、シュラ様が服を脱ぎ捨てる音がバサバサとしていたが、そんなものは聞こえない振りをして、私はもう一度、上掛けを首元まで引き上げた。


「不貞腐れるな、アンヌ。」
「別に不貞腐れてなどいません。」
「だったら、こちらを向け。」


ギシッとベッドが揺れる音に続いて、ガサガサと上掛けに潜り込む音が響き、それから、極近い耳元にシュラ様の声が聞こえた。
恐る恐る、最初は首だけを回して背後に寝そべるシュラ様を見る。
どうやら胸のところまでは、ちゃんと上掛けに隠れているようで、私はホッとして身体の向きを変え、彼と真っ直ぐに向き合った。


「こっちへ……。」


長く逞しい腕が伸びてきて、私の身体を否応なく引き寄せる。
こうなってしまったからには、もう覚悟を決めなければいけない。
私は全身の力を抜き、逆らう事なくシュラ様に全てを委ねた。





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