シュラ様からの濃厚な口付けを受けた今、身体の内側は燃え上がり、心は期待に湧き上がっている。
でも、その一方で、こうもその先の『予感』を突き付けられては、無意識に身が竦んでしまう。
やっぱり、まだ怖い。
この先まで進んだとして、前の彼の時のように上手くいかなかったら……。
そんな風に失敗した場合の事ばかりを考えては、気持ちが萎えてしまうのだ。


「ふぅ。やはり、まだ駄目か……。」
「す、すみません、シュラ様。」
「いや、アンヌが謝る事ではない。少し……、残念だが。」


そう言って、私の髪から手を引き抜くと、シュラ様は小さく諦めの溜息を吐いた。
また期待外れに終わらせてしまった。
深い深い罪悪感が、私の胸を襲う。


「しかし、アイオリアが無事に戻ってきたのは嬉しいが、こうなってくると、あと二日は戻って来なければ良かったとも思うな。」
「え?」


フワリと逆立った髪を掻き毟りながら、一体、何を言い出したのやら。
戻って来なければ良かったとは、どういう意味?


「アイツが帰還しなければ、明日は俺が援護に赴く筈だった。そうなれば今夜、アンヌは俺とベッドを共にする事を厭わなかっただろう。」
「っ!!」
「今頃は、俺のベッドの上で、熱く愛を交し合っていたかもしれん。それが、また振り出しに戻ったのだ。俺にとっては、残念極まりない。そうだろ?」
「えっと……。」


そうだ、そういう話だったっけ。
昨日の夜には、もう一日、じっくり考えろと言われていた。
互いの情熱を知らないままに、彼が命を落とすような事があれば、きっと後悔するだろうから、と。


「あの……、本当にすみませんでした。」
「だから、お前が謝る事じゃないと言っている。」


シュラ様は苦笑いを浮かべ、私の髪を今度はグシャッと撫でた。
そうする事で、多少の鬱憤を発散してるつもりなのだろうか。
いつも以上に、しつこく髪をグチャグチャに撫でてくる。


「そうだ。良い事を思い付いた。」
「え?」
「アンヌ、今夜は俺のベッドで寝ろ。」
「え? は……、はああ?! と、突然、何を言い出すのですか、シュラ様っ?!」
「別にセックスを強要する訳じゃない。共寝をするだけだ。手は出さん。」


そうは言っても!
そうは言ってもですね!
その言葉、私が鵜呑みに出来るとでも思っているんですか?!
これまで何度か、危うく襲われそうになったっていうのに!!


「折角のチャンスが消えてなくなったんだ。せめてアンヌを腕に抱いて寝るくらい、許されても良いだろう。」
「せめて、と言われましても……。」


大体、どういう理屈なんですか、それ……。
全く意味が分かりません。
何処をどう歪曲したら、そういう話に摺り替わるのか。
ご都合主義も良いところです、シュラ様。





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