「そんなに心配するな、シュラ。彼女は俺が責任を持って、五体満足の状態で連れ帰ってやる。だから、そんな眼光で睨むのは止めてくれないか。俺の心臓に穴でも開きそうだ。」


そう言って、アイオロス様は苦笑を浮かべ、シュラ様の肩を軽く叩いた。
涼しい顔をして受け流していたから、てっきり気付いていないのかと思っていたけれど、ちゃんと分かっていたんですね、アイオロス様。
シュラ様が思いっ切り睨み付けていた事。
苦笑とはいえ、あの鋭い瞳に睨まれて平然としていられるなんて、流石はアイオロス様、凄い方です。


「いまいち信用ならん。」
「そう言うなって、シュラ。彼女にいてもらわなければ困る事もあるんだ。」
「しかし……。」


ここにきて、シュラ様の独占欲の強さが、ムクムクと顔をもたげてきている模様。
こうなると、なかなか納得しないのがシュラ様だ。
でも、だからといって、ここで帰ってしまえば、そもそも私が何のために一緒に獅子宮まで来たのか、その意味が全くなくなってしまう。
ただ着替えを運んできた、それだけで終わってしまうもの。


「ならば、そうだ。俺が報告から戻ってきたら、アンヌを磨羯宮まで送ろう。どうだ?」
「それは、もっと駄目だ。お前は、より一層、信用ならん、アイオリア。」


流石は腕に聖剣を宿したシュラ様です、見事な一刀両断っぷりですこと。
もう、ここまできたら、私が心配というよりも、お二人が信用出来ないというよりも、ただ単に、シュラ様の我が侭でしかない。
それが証拠に、後ろではデスマスク様が、いつものように呆れの溜息を吐いている。
許されるなら、私も溜息の一つくらい吐きたいです。


「まぁ、どのみちリアは駄目だよ。あっちの彼女を放って置いて、自分はアンヌを送っていくなんて、今のお前には許されていない。」
「あー、確かに。オマエは、あの女に責任があンだからな。事態が収拾するまでは、傍を離れちゃいけねぇだろ。」
「う……。」


喉を詰まらせ、反論出来ずに顔を顰めるアイオリア様。
そうか、そうよね。
こうなった以上、アイオリア様は自由に動けない。
眠っている今は良いとしても、目が覚めた後は、彼が責任を持って、彼女を『監視』していなければいけないのだもの。
ココから逃げ出さぬように、おかしな行動を取らぬように。


「兎に角、アンヌは俺が責任を持って連れ帰るから、安心しろ、シュラ。お前は、そんなにも俺が信用出来んのか?」
「信用出来んと言うか、何を言い出すか分からんから困る。」


それは私も同感です。
アイオロス様は、そのにこやかな表情からは想像も出来ない奇抜さがあるというか。
一体、何を考えているのかサッパリ読めないので、次に何を言い出すか、何を仕出かすか分からなくて、相対する身としては戸惑ってしまう。
だから、正直、ちょっと怖い。


「彼女を困らすような事はしない、約束しよう。だから、心配するな。」


結局、渋々だがアイオロス様に言い包められた形となったシュラ様。
デスマスク様、アイオリア様と共に、獅子宮から追い出されるように背を押され、酷くご機嫌斜めな様子で教皇宮へと向かっていった。



→第4話に続く


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