が、ちょっとだけ良い気分になったのも束の間。
不機嫌だったシュラ様の顔が、直ぐにパッと明るくなった。
心の中に、何か良いアイディアでも浮かんだのだろうか。
口の端に浮かんだ軽い笑みがセクシーではあるけど、この表情は明らかに何かを企んでいる顔だ。
先程と同じく、嫌な予感が私の全身を走り抜ける。
「仕方ない、百歩譲って女官服の事は良しとしよう。その代わり……。」
「その代わり……、何ですか?」
凄く凄く嫌な予感がする。
と言うか、シュラ様のこの表情を見る限り、嫌な予感しかしない。
「せめて下着は俺好みに変えろ。」
「…………はぁ?!」
今、なんて仰いましたか、シュラ様?
し、下着?
下着って、今現在の私達の状態では、悲しいかな見せる予定もないのに、どうしてシュラ様好みの下着を着けなきゃならないんですか?!
何のために?!
誰のために?!
「アンヌの事だ。どうせ下着も飾り気のない清楚というより質素なものを着けているのだろう? それでは、俺がつまらん。これを機に、お前に似合うセクシーな下着に変えたら良いだろう。」
「そ、そんな派手な下着を着けたら、女官服から透けてしまいます! 大体、私にそんな下着は似合いませんから!」
「別に派手な色の下着にしろとは言ってない。白い色のものでも、豪華でセクシーな下着だって沢山あるだろう。自分には似合わないと言うが、試してもみないで、どうして分かる?」
「そ、それは……。」
モゴモゴと言いよどんでいる間に、形勢はすっかり逆転してしまった模様だ。
シュラ様は、その整った顔に自信満々な笑みを取り戻し、何やら酷く嬉しそうに、また私の事を頭の上から足の先まで舐めるように眺めている。
「セクシーな下着か……、楽しみだな。俺はアンヌのそんな姿を想像するだけで、息が上がってくる。」
「や、シュラ様っ?! そ、そんな勝手に人の恥ずかしい姿を想像しないでください!」
「何故だ? 想像するくらい自由だろう。何せ、俺は自由にお前に触れさせてもらえんのだからな。せめて想像の中だけでも良い思いをさせてもらわねば。」
ま、またもシュラ様に自己処理の良いネタを与えてしまった気がする……。
気がするのじゃなくて、確実に与えたんだわ。
シュラ様の脳内で、自分がどれだけあられもない姿をさせられているのかと思うと、顔から火が出そうだ。
「よし。次の休みは市街に出掛けて、その時、ランジェリーショップにも行こう。」
「え? 一緒にって……。まさかシュラ様もお店に行かれるんですか?」
「無論だ。俺のための下着を、俺が選ばなくてどうする。」
無理です、無理!
絶対に、無理!!
こんな百人前以上の美男子と連れ立ってランジェリーショップになんて、間違っても入れません!
そんな事したら、寿命が五十年は縮んじゃう!
その場で気絶して倒れますよ、私!
「平気だろう、そのくらい。直ぐに慣れる。」
直ぐに慣れるって、つまりは一回限りではなくて、何度も一緒に行く気満々なんですね……。
この人と一緒にいる限り、心臓が何個あっても足りないわ。
私は激しく脱力しながら、そう思った。
→第2話に続く