私の女官服のスカートを握ったまま、何故かジットリとした視線で、私の姿を上から下まで眺め遣るシュラ様。
そして、小さく溜息。
いやいや、溜息を吐きたいのは、どちらかと言えば私の方なんですけど。
何故にシュラ様が、そんな溜息を吐く必要があるんですか?


「夜に楽しませてくれんのだから、せめて、俺の視覚だけでも満足させてやろうとか思わんのか、アンヌは?」
「……は?」


シュラ様の言葉の意味が分からず、目を丸くする私に、彼は益々、その瞳を柳のように細くする。
何を考えているのだろう?
でも、こういう時は大抵、良からぬ事である場合が多い。
この数ヶ月に渡る経験から、こういう時のシュラ様は確実に何かを企んでいると私は知っている。


「清楚で貞淑であるのは、女官としては良い事だ。だが、俺の女として傍にいるのなら、少しくらいは俺を満足させようとの努力くらいはあって良い。そうは思わんか?」
「思わないか、と聞かれましても……。例えば、どんな事ですか?」
「もっと露出の多い服を身に着けるとか、だな。俺の目を楽しませろ。」


いやいやいや!
そんな言われるままに露出度を増やした日には、シュラ様が我慢出来るとは到底、思えないんですけど!
今までの行動を考えれば、絶対に襲われます!
確実に押し倒されます!


大体、この女官服だって、白い服で清楚には見えるけれど、十分に露出は高い。
スカートは長くて足は隠れているが、その代わり、この胸元。
肩留めから緩やかにドレープを描くラインは、鎖骨やデコルテを、これでもかと露わにしている。
胸の大きさに自信がある子は、あえて下着のみでキャミソールを着ず、谷間を強調してみせていたりもするくらい、胸元の開きは大きい。
だから、ドレープの下から、ちょっとだけ見えるようにキャミソールや胸元レースのスリップなどを着るのが、女官達の間では一般的だ。


「嫌です。お断りします。」
「何故だ?」
「シュラ様は私の気持ちを最優先すると仰ってくださいました。でも、そんな破廉恥な格好で私がウロウロしていたんじゃ、シュラ様、我慢出来なくなるんじゃないですか?」
「…………。」


舐めるように私の全身を眺めていたシュラ様の視線が、ピタリと止まる。
あぁ、これは不機嫌な時の顔だわ。
と言っても、相変わらずの無表情なのだけど。
私が反論したから、ご機嫌に斜めになったのね。
でも、だからと言って、私の方が引く気は毛頭ない。


「それに、この宮は意外と人の出入りが多いです。シュラ様以外の人の目にも、露出度の多い服を着た私が映りますよ。それでも良いんですか?」
「…………。」
「良いんですか?」
「…………駄目だ。」

たっぷりと間があってから、漸くの返事。
独占欲の強いシュラ様にとっては、露出の多い服装の私を外部の目に晒すなど持っての外。
珍しく口車で私がシュラ様を言い負かした、そんな瞬間だった。





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