という訳で、毎日、毎夜、ガックリと落ち込んだシュラ様の溜息と共に、自分のお部屋へと引籠もる私。
何もしないから、せめて同じベッドで寝ないか? とのシュラ様からのお誘いも全て断り、私は自分の部屋の小さなベッドで眠っている。
だって、これまでのシュラ様の行動を思えば、何もしないという言葉は信用出来ないもの。
欲求が上限まで達すれば、優しさなど金繰り捨てて襲ってくるに違いない。
そう、結局のところ、お付き合いする前の状態と全く変わらないのだ、私達の状況は。
「相変わらず面倒臭ぇ女だな、オマエは。シュラ、コイツの気持ちなんざ立ててやる必要なンかねぇから、とっとと押し倒しちまえ。ヤッてみりゃ、意外と上手くいくモンなんだよ。」
「無理強いをして、アンヌに嫌われたくはない。こういう事は、もっと、こう自然にだな……。」
「オマエは思春期の乙女かっての。何、セックスに夢見てンだよ。自己処理年月が長過ぎて、頭イカれちまったか、エロ山羊が。」
お願いですから、これ以上、シュラ様をけしかけるのは止めてください、デスマスク様。
これはシュラ様と私の問題。
外野は黙って見守ってて欲しいものです。
「兎に角、俺達の事は、俺達で何とかする。だから放っておけ。それよりも、デスマスクよ。お前は自分の事を何とかしたらどうだ?」
「あ? 俺がなンかしたって言うのか?」
「こうも毎朝、毎朝、この宮にコーヒーを飲みに来るって事は、つまりだ。お前の女が、まだ帰って来てないのだろう?」
シュラ様のその言葉に、途端に不機嫌かつ鬼の形相になるデスマスク様。
つまりは図星なんですね。
アフロディーテ様にも、あんなに諭されたって言うのに、まだ恋人さんのところに謝りに行ってないんですか、この人は。
「うっせーよ。そのうち、寂しくなって帰ってくンだろ、それまで放っておけ。」
「そんな事を言ってたら、本当に逃げられちゃいますよ。ただでさえデスマスク様は気難しくて、一緒に暮らすのは厄介なんですから、その恋人さんに逃げられたら、次はないかもしれません。」
「テメッ、不吉な事、言うンじゃねぇ! つか、俺を誰だと思ってる? 女なんざ、選り取り見取りだ。」
「一夜だけの相手なら、そうかもしれんが、ずっと先まで連れ添う相手ならば、そうもいかんだろ。大事なパートナーと思うなら、ちゃんと話し合え、デスマスク。」
そう言って、シュラ様がチラリと私の方へ視線を向けた。
それはつまり、デスマスク様の事を指しながらも、私達にも当て嵌まるのだと、そういう意味だろう。
この先、ずっと連れ添う相手だと思うからこそ、焦らずに大切に向き合っていきたいのだと。
「ったく、どいつもこいつも煩ぇよ。俺の事をとやかく言う暇があるなら、テメェ等の事をなンとかしやがれ。」
そう捨て台詞を吐いて、ドカドカと部屋を出て行くデスマスク様。
その派手に閉められたドアを眺めながら、シュラ様と私は、同時に溜息を吐いていた。
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