「んっ……。ん、ん……。」


キスはいつの間にか、深いものへと変わっていた。
昨日までとは違う、お互いに求め、欲し、相手の全てを味わおうとするキス。
自然と絡み合う舌と舌。
息が出来ない苦しさも、酸欠気味でボーッとする頭も、何処か心地良い。


「ん……、はっ。あ、んんっ……。」


唇を離しては息を吸い、また磁石のように引き合い、貪り合う。
唇が重なり合った瞬間。
舌の先同士が触れ合った瞬間。
彼の舌が一番気持ち良いところに絡み付いてきた瞬間。
ゾクリと身体中を這い上がる感覚に、うっとりと掠れた意識が奪われていく。
シュラ様の大きな手が私の頭を強く引き寄せたり、髪を掻き乱したり。
指先で耳を辿ったり、顎を持ち上げたり。
様々に形と角度を変えて、心地良さを感じる場所を次々と変えていくせいで、このキスには終わりがないのではないかと思えてくる程。


その長い指先が、本当に優しく掠めるように頬を辿り、顎を撫で、首の線を伝い、両の鎖骨を撫でると、それまでにも増した震えが、身体の中心から全身へと駆け巡っていく。
そして、足に力が入らなくなり、私は熱いキスを続けながら、シュラ様の逞しい身体に縋った。


「オォイ。朝っぱらから、テメェ等だけで盛り上がってンじゃねぇぞ。」
「何も私達相手に、そんな見せ付けなくても良いのに。」


「「っ?!」」


突然、響いた呆れの声が二つ。
慌ててキスを止め、振り返れば、ダイニングの入口にデスマスク様とアフロディーテ様が立っていた。
呆れ顔で目を逸らすデスマスク様と、苦笑いを浮かべるアフロディーテ様。


真横のシュラ様を見上げると、その切れ長の瞳が驚きで見開かれている。
彼等が近付いてきている気配に気付けなかったのは、私だけではなく、シュラ様も同じだったのだと、その表情から分かった。
それ程に、私達二人共、夢中になってキスに没頭していたのだわ。
恥ずかしい……。


「貴様等、いつからそこに?」
「少し前から、かな。まさか、シュラまで気付いてなかったのかい?」
「オマエ等、ぜってーワザとだろ? 見せ付けて何が嬉しいってンだ。ったく、こンな朝早くから発情してンじゃねぇよ、色ボケ山羊。」


アフロディーテ様は少し困った風に苦い笑いを浮かべながら答え、デスマスク様は至極不機嫌そうに言葉を吐き捨てる。
元々、寝起きが悪い事に加えて、余程、床の上で寝る羽目になったのが不満だったのだろう。
目に見える全てのものが気に食わないらしく、椅子が硬いとか、座り心地が悪いとか文句を言いつつ、デスマスク様は勝手に朝食の席に着いた。


「お前、何、当たり前な顔をして、そこに座る?」
「ぁあ? 朝メシ食わしてくれンだろ? 四人分、ちゃ〜んと用意されてるモンなぁ。これで食うなっつーなら、俺も黙っちゃいねぇぞ。」
「まぁまぁ、二人共、そんな険悪にならずに。折角、アンヌが作ってくれた美味しそうな朝食だ。感謝して頂こう。」


苦笑いを浮かべたままのアフロディーテ様が、睨み合うデスマスク様とシュラ様を宥めて、何とかテーブルを囲む。
しかし、穏やかではない空気を纏った二人のせいで、朝食の席は酷く居心地が悪かった。





- 5/7 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -