11.飲み会翌朝



――チュン、チュン、チュン……。


遠くから聞こえる鳥の声で、目が覚めた。
何となくダルさを感じている身体はそのままに、瞼だけを開く。


あれ……?
ココは、何処?
見慣れない部屋だ。
広くて温かで、開いた窓からは朝の光がたっぷりと降り注いでいる。


「っ?! し、シュラ様っ!」


ハッとして身体を起こす。
だが、そこに彼の姿はなかった。


私は、いつの間にか眠ってしまっていたのだわ。
椅子に座ったまま、ベッドに上半身を預け、突っ伏した状態で。
目覚めたシュラ様が肩に掛けてくれたのだろう彼の上着が、起き上がった瞬間に床にハラリと落ちた。


時計を見れば、いつも私が起きる時間よりは少し早いくらいの時刻。
シュラ様はトレーニングに出て行ったのだろう。
あれだけ飲んで食べて騒いだ次の日だと言うのに、普段と全く変わらず早朝トレーニングに向かうなんて、シュラ様らしいと言うか、何と言うか。
そういう私も、条件反射で床に散乱していたシュラ様の衣服を掻き集め、皺の寄ったシーツをベッドから引き剥がしているのだから、人の事は言えないのだけれど。


洗濯物を洗濯機に放り込むと、一度、自分の部屋へと戻った。
汗の掻いた衣服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。
昨夜の飲み会の疲れも、慣れない体勢で寝ていた事で溜まった疲労も、熱いお湯に流されて、意識も身体も次第にスッキリとしていく。
その一方で、ボーッとシャワーを浴びながら、頭の中を過ぎるのは、やはりシュラ様の事ばかりだった。


やっぱり、ちょっと顔を合わせ難いな……。


だって、私から話を振るというのも何だかおかしいし。
かといって、シュラ様が昨日の事を綺麗サッパリ忘れていようものなら、それはそれでヘコむというか。
でも、シュラ様にグイグイ押されても、それはそれで怖いような。


「はぁ………。」


結局、シャワーから出る頃には、すっかり思考の海に溺れ、口を吐いて出るのは溜息ばかりになっていた。
駄目だわ、こんな状態じゃ、お仕事にも影響しちゃう。
そうよ、今からグタグタ考えたって仕方がない。
なるようになる、うん。


パシッと両手で自分の頬を軽く叩いて、気持ちを引き締める。
手早くメイクを済ますと、いつもの自分に戻って、リビングに向かった。
シュラ様が早朝トレーニングから戻ってくる前にも、やっておかなければならない仕事は沢山ある。
昨夜は途中で飲み会を抜けた(強制的に閉め出されたとも言えるけど)から、きっとリビングは物凄い事になっているに違いない。
朝食の準備に取り掛かる前に、部屋の片付けと、山のような食器の洗い物をしなきゃいけないだろう。
そう思うと、流石にげんなりとした気分になった。





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