キスは次第に深まり、短かった間隔も、唇が触れ合う度に長さを増していく。
そして、気が付けばシュラ様のペースに持ち込まれ、今では窒息しそうな程に長いキスが続いていた。


「ん、んーー!」


正直、感じていた甘さは徐々に薄れ、苦しさと、そして危機感からの焦りが大きくなる。
私は回していた腕で、圧し掛かってくるシュラ様の背中をバンバンと叩いた。
でも、彼は身体を離してくれるどころか、更に体重を預けてきて、ズシッと重くなる。


これはいけない。
駄目よ、このままじゃ……。
そう思い、何とか動く手足をバタつかせてもがこうとした瞬間だった。


「ぐうぅ。」


え?
何、今の声?
今の変な声は……、シュラ様から聞こえた、もの?


驚くと同時に、キスを続けていた唇が離れ、そのまま横滑りするように、シュラ様の顔が私の顔の横へと落ちた。
彼の大きな身体は、ズッシリと私の上に圧し掛かったままで。
これは、もしかしての、もしかして?
え、でも、まさか、この状態で?


「し、シュラ様?」
「ぐぅ。」


や、やっぱり寝てるし!
ど、どうして、この状態、あの雰囲気の中で、突然に眠ってしまえるの?!
あんなに熱烈なキスを仕掛けておいて、まさか、その途中で寝落ちるなんて事、ありえるんですか、普通?!


「シュラ様、シュラ様ー?」
「…………。」


駄目だ、完璧に熟睡しちゃってる。
背中を叩いても、頭を揺すっても、何をどうしても起きる気配がない。
うつ伏せで顔が寝具に埋もれてしまっているのに、呼吸は大丈夫なのだろうか?
でも、動く気配もないのだから、ちゃんと息はしていると思うけれど……。


こんなにも目を覚まさないのならばと、私はとりあえず、シュラ様の身体の下から這い出ようと試みた。
彼が眠ってしまった事で、その大きな身体の全体重に押し潰されて下敷きになってしまい、相当に苦しかったのだ。


多少の時間は掛かったが、私は何とか脱出に成功した。
その際、シュラ様の身体を覆っていたシーツまで一緒に巻き込んでしまい、またも素っ裸な彼の後ろ姿を、しかも至近距離で見て、思わず悲鳴を上げそうになったが、寸でのところで堪えた。
悲鳴でシュラ様が起きてしまったら、元も子もないもの。
この距離で、『ソレ』を見てしまおうものなら、今度こそ危険街道まっしぐらだ。
私は目を逸らしたまま、剥がれ落ちてしまったシーツを、うつ伏せに眠るシュラ様に掛け直した。


それにしても、まさかこんな展開になるなんて。
と言っても、丁度、就寝しようとしていたところだったのだから、眠気は強かったのだろうけれど。
でも、キスの途中で寝てしまうとか、驚きを通り越して呆れてしまう。
あ、でも、相当にハイペースでお酒を飲んでいたし、かなり酔っていたのかもしれない。


ん、あれ?
という事は、さっきの告白はお酒に酔っての事だった?
お酒の勢いで言ってしまっただけで、本当は本心じゃないとか、そういう事もありえるのかも。
明日の朝になってみたら、シュラ様、何も覚えていなかったりして……。


「お願いですから、覚えていないなんて言わないでくださいね、シュラ様。」


すっかり夢の世界に落ちて、私の声など聞こえていない彼に懇願しても無駄だと分かっていながら、そう呟く。
私はベッド横の椅子に座り直し、眠るシュラ様の顔を眺めた。
彼の柔らかな黒髪を撫でながら、唇を吐いて出るのは溜息ばかりだった。



→第11話に続く


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