「つー事で、分かったろ?」
「な、何がですかっ?」
「だから、しらばっくれンなっつってんだろ。」


肩を抱くデスマスク様の腕に、益々、力が入る。
私は、その無駄に色っぽい流し目から顔を背けるようにして、彼の身体を押し返したが、屈強な身体はビクともしなかった。
それどころか、デスマスク様の言葉に煽られて、私の頭の中に、今までの事が走馬灯の如く甦る。


ボーっとしていたら、頬にキスされた事。
掠めるように唇を奪われた事。
手を繋いで街を歩いた事。
彼の腕に抱かれて、磨羯宮まで走った事。
逞しい腕の中に、強く強く抱き締められた事。
私の言葉を奪うために仕掛けられた情熱的なキスも……。


その全てが、シュラ様の冗談か、私をからかって楽しんだいるだけだと思っていた。
だけど、今、思い返せば、確かに冗談で済まされるようなレベルではなかったような。
特に、あのキスとか、凄く……、ね、熱が籠もっていた、し……。


「おや? 真っ赤になって可愛いな、アンヌ。何を思い出したんだい?」
「っ?!」
「一度か二度、押し倒され掛けた事くらいあンじゃねぇの? 忍耐強ぇとは言っても、アイツだって男だしなぁ。」


言われて思い出すのは、つい先日の出来事。
熱中症で倒れて寝こんでしまった時、朝、目を覚ましたら、彼の腕の中に抱き締められて寝ていた。
しかも、服を一枚たりとも身に着けていない状態のシュラ様に!


きゃー、忘れるのよ、忘れるの!
あの時、シュラ様の裸を見てしまったとか、お尻を見てしまったとか、そういう事は脳内から消去するって決めたの!


「なぁ、知ってるか、アンヌ。昔、一度だけ、アイツを『エッチな欲望を処理するための施設』に連れてってやった事があンだよ。したっけアイツ、『相手がアンヌじゃないと機能しないし、ヤる気も出ない。』とか何とかぬかしやがって、結局、何もしねぇで出てきやがったンだぜ。」
「そ、それは……。」


前に同じ話を、シュラ様自身の口から聞いた事があるから知っている。
その時は、シュラ様はそれだけ彼女の事が好きなのだなと、なんて一途なんだろうと思っただけだったけれど。
今、考えてみると、それは私だったという訳で。
しかも、溜まった欲望は『彼女の姿でも思い浮かべながら耽った方が燃え上がる。』と、じ、自己処理されていたのだから、それはつまり、その……。


「この六年間、オマエ、ずっとシュラの自己処理のオカズにされてたンだぜ。つか、六年もありゃ、妄想内でもヤリ放題、シ放題だよな。」
「っ??!!」
「オマエ、アイツの妄想内で、どんだけエロい格好させられて、どんだけエロい攻めにあってたか、考えた事あンのか?」
「っ?! ★○∞〆◎♂×♀%●◇っ?!」
「ほらほら、もうその辺にしときなよ。アンヌが目を回しそうだ。」


クスッと笑うアフロディーテ様の声を耳元に聞きながら、目を回すのは勿論の事。
ゲラゲラと楽しそうに笑うデスマスク様の腕の中で、腰を抜かし掛けていた私だった。



→第10話に続く


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